杜甫の七言律詩「登高」(壺齋散人注)
風急天高猿嘯哀 風急に天高くして猿嘯くこと哀し
渚清沙白鳥飛回 渚清く沙白くして鳥飛び回る
無邊落木蕭蕭下 無邊の落木蕭蕭として下り
不盡長江袞袞來 不盡の長江袞袞として來る
萬里悲秋常作客 萬里悲秋常に客と作(な)り
百年多病獨登臺 百年多病獨り臺に登る
艱難苦恨繁霜鬢 艱難苦(はなは)だ恨む繁霜の鬢
潦倒新停濁酒杯 潦倒新たに停む濁酒の杯
風が激しく吹き荒れる秋の空は澄み渡って猿の啼く声が悲しい、長江の渚は澄み渡って砂は白く光り鳥が飛び回る、果てしもなく広がる林には枯れ葉がわびしく舞い散り、尽きることのない河の水が湧くようにして流れてくる
はるか故郷から離れた地で旅人として秋を迎え、一生病気がちだった身でひとりこの台に上った、苦労のあまり髪はすでに真っ白になり、このごろは病気のために濁酒を飲むこともできなくなった
杜甫晩年の姿を象徴するような詩、誰もが涙なくしては読むことができないほどだ、かくいう筆者も生涯に出合ったもっともすばらしい漢詩のひとつだ、余りにも有名なので、改めて解説するまでもないだろう
関連サイト: 杜甫:漢詩の注釈と解説
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