ニューズウィークのロシア版 Русский NEWSWEEK が廃刊になった。2004年に創刊されて以来、ある意味でロシアの良心を代表してきたとされる雑誌が廃刊になった理由は、表向きには経済的なものだ。編集者のミハイル・フィッシュマンによれば、創刊以来黒字だったことはなかった、赤字を積み重ねてまでも、雑誌を出し続けるメリットがなくなったということだ。
だが廃刊の理由は別にもあるというのが、大方の反応だ。プーチンの時代には多くのリベラルな雑誌が廃刊に追い込まれた、その中でニューズウィークが持ちこたえてきたことは、稀有の事態なのだ、今のロシアにはニューズウィークのようなリベラルを標榜する雑誌を受け入れる土壌はないのだから、遅かれ早かれ消える運命にあったものが消えただけだ、そう見るものが多いのだ。
ロシア版ニューズウィークは遠慮のない体制批判によって、クレムリンから目の敵にされてきた。とりわけプーチン側近のうちではソビャーニンに次いでナンバーツーの地位を占めるスルコフに憎まれた。スルコフはチェチェン人だが、それをひた隠しにしてきたのは奇妙だとか、スルコフの外交術は子どもよりも稚拙だなどと評して、ことさらに怒りを煽ってきたからだ。
これに対してスルコフは、相手が相手だけに、さすがに露骨なマネはしなかったが、その代わりに、ナーシНаши やマラダーヤ・グヴァルヂアМолодая Гвардиа といった右翼青年組織をフル動員して、嫌がらせ攻撃を行った。これらの組織はスルコフ自身が、プーチンのために作り上げたものだ。
Newsweek とならんで反権力の立場を貫いてきたノーヴァヤ・ガジェータ Новая Газета は、同じような仲間が消え去って、孤軍奮闘振りが際立ってきた。そのノーヴァヤ・ガジェータに対して、クレムリンはさまざまな警告を発しては、骨抜きにしようとしている。
ノーヴァヤ・ガジェータはこの10年間で5人もの記者を暗殺されながら、反権力を貫いてきた。アンナ・ポリトコフスカヤの暗殺は象徴的な出来事だった。だからそう簡単にはクレムリンの脅しに屈することはないだろうと思うが、それも程度問題かもしれない。(上の写真はロシア版ニューズウィーク:Последний Бой Лужкова<ルシコフの最後の戦い>を特集している)
(参考)The Real Reasons NEWSWEEK RUSSIA Folded By Owen Matthews and Anna Nemtsova
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