メドヴェージェフによって追放された前モスクワ市長ルシコフの後任には誰がなるか、いろいろな意味で注目を集めていたが、プーチンの腹心として知られるセルゲイ・ソビャーニン Сергей Семёнович Собянин が任命された。
この人事は決して意外とはいえないが、しかし意味深長でもある。というのも、ルシコフの追放をめぐる今回の抗争劇には、メドヴェージェフの大統領としての威信がかかっていたから、当然その後任選びにもメドヴェージェフの意向が貫徹するだろうと受け取られていたからである。
結果はメドヴェージェフではなく、プーチンの意向が優先したわけだ。このことは、ロシアの今後の政治情勢を占う上で重要な材料を提供するものだと、受け取られている。
プーチンとソビャーニンの関係はそう旧いものではないが、プーチンのソビャーニンに対する信頼は非常に厚いといわれている。プーチンは2005年に、チュメニ州知事だったソビャーニンを大統領府の主席補佐官に迎え、2008年に首相になると、自分の分身として副首相に任命した。
それ以前にソビャーニンは、2000年には連邦上院議員としてプーチンを支持し、その最大の政敵だったスクラートフ検事総長を失脚させた。また2004年には地方首長の公選制廃止を掲げたプーチンを強く支持した。こんなことから、プーチンは政治的のみならず、あらゆる場面でソビャーニンに深い信頼を寄せた。
ソビャーニンは能吏型の人物で、メドヴェージェフと比較しても、ずっと地味な印象を与える。チュメニ州知事時代には、マスメディアを統制して、余計な記事はおろか、自分の写真も取らせなかったというが、そんなところはプーチンのスタイルとよく似ている。全く笑うことがないのも、プーチンと似ているといえる。
今回のこの騒ぎを通じて、プーチンが2012年に再び大統領に返り咲くという憶測が一段と強まっている。その際には、メドヴェージェフではなく、ソビャーニンがプーチンの政治的なパートナーになる可能性が高い。
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