フランスの学生たちの反乱に続いて、イギリスの学生たちも立ちあがった。こちらは国中の大学生たちのほかに、グラマースクールの生徒たちまで巻き込み、文字通り若者全体が政治にたいしてノーを突きつける事態に発展した。比較的穏健な気質で知られるイギリスの若者たちを、何が怒らせたのか。
事の発端は、保守党政権が授業料の値上げを発表したことにある。大学の授業料を始め、あらゆる教育機関の授業料を三倍も値上げするというものだった。
一挙に三倍も値上げされたのでは、学生たちはたまったものではない。現在学生であるものは、来年の授業料が払えなくなるかも知れず、これから学生になろうとするものは、経済的な理由からあきらめなければならぬかもしれぬ。こうした不安が怒りに変り、大勢の学生たちが立ち上がった次第だ。彼らはロンドンの大通りをデモし、保守党本部の建物に乱入して、抗議の意思を表明した。
保守党政権の説明では、イギリスの財政赤字は先進国中最悪で、このままでは遠からず破産しかねない、それを回避するためには、あらゆる予算の見直しが必要だ、教育予算も聖域ではない。
しかし学生たちにしてみれば、財政赤字は自分たちの責任ではない。上の世代の失敗を自分たちの世代に押し付けるのは納得できない。第一保守党の政治家たちは、選挙戦の最中は授業料の値上げをするなどとは一言も言っていなかったではないか、それをいまさら持ち出すのは公約違反だ、そんな連中はリコールだ、というわけで、いまや学生たちの間では、Tories Out! という叫びが合言葉になっている。
重ねていうが、イギリスの学生たちは伝統的に大人しいということになっていた。紳士淑女の国だから、子どもの頃からエレガントさを重視してきたのだ。だが、ハリー・ポッター世代といわれる昨今の若者たちは、こうした伝統から少しづつ、脱却しつつあるようにみえる。大人たちの身勝手なやり方が、彼らをそうさせているといえなくもない。(写真はGuardian提供)
関連記事:
ヨーロッパの課題は労働生産性の向上:パリの暴動
naruhodo