草野心平の詩集「絶景」のうちでもっとも有名になったのは「猛烈な天」という詩だ。天は、カエルを超越した草野にとって、富士と並んでライトモチーフになったものだ。草野はこれらのモチーフを繰り返し歌っている。その最も早い時期の傑作がこの「猛烈な天」である。
猛烈な天
血染めの天の。
はげしい放射にやられながら。
飛び上がるやうに自分はここまで歩いてきました。
帰るまへにもう一度この猛烈な天を見ておきます。
仮令無頼であるにしても眼玉につながる三千年。
その突端にこそ自分はたちます。
半分なきながら立ってゐます。
ぎらつき注ぐ。
血染めの天。
三千年の突端の。
なんたるはげしいしづけさでせう。
「猛烈な」という言葉が感じさせるイメージとは裏腹に、歌われている内容はかえって静的なものだ。この詩は草野の自然態がよく現れているものと評されているが、彼の自然態は静かさの中で宇宙の根源とつながりあっている、そんなさまを感じさせる。
関連サイト: 草野心平:詩の鑑賞
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