インターネット上の内部告発サイト WikiLeaksの存在感がいっそう高まっているようだ。先日はイラク軍事作戦の機密文書40万点を公開し、7月にはアフガン関連の秘密文書9万点を公開していたが、今回(11月28日)は、アメリカの外交活動にかかわる文書25万点を公開した。それも、今までの文書がすでに広く知られていた事実に関するものがほとんどだったのに対して、今回は、おやと思わせるような内容のものが多く含まれている。
WikiLeaksは、ネット上の公開に先立って、ニューヨークタイムズなどの有力紙にあらかじめ内容を通知していた。したがって公開とほぼ同時に、その概要を紹介する記事も、ネット上に飛び交った。
そのうちの興味深い記事をあげると、北朝鮮が中距離ミサイルをイランに提供し、イランはこれをもとに長距離ミサイルを開発しようと意図しているとか、こうしたイランの動きに危機意識を覚えたバーレーンのハマド国王やサウジアラビアのアブドラ国王らが、米国にイランの核開発阻止を強く要請し、「今のうちに蛇の頭を切り落とすべきだ」(アブドラ国王)などと促したとか、イエメンのサレハ大統領が今年1月、ペトレイアス米中央軍司令官(当時)と国際テロ組織アルカイダ系勢力の掃討作戦について話し合った内容として、大統領が「今後も(作戦中の)爆弾は米軍でなく、わが軍のものだと言い続ける」と述べたとするものなどだ。
また韓国が北朝鮮を併合した後、それを不安に思うに違いない中国をどうなだめるべきかとか、アメリカがグァンタナモの収容者を各国に引き取ってもらう見返りにどんなお土産を提供したかとか、興味深い情報も多数含まれている。
WikLeaks のやり方をめぐっては、賛否さまざまな意見がある。
一方では、外交問題についても、情報が公開されてガラス張りになるのは好ましいとする意見がある。他方では、外交に秘密は必要悪なのだから、何から何までリークしてしまうのは、時によって重大な事態を引き起こすこともありうると、慎重な姿勢を求める意見もある。
当事者のアメリカ政府は、カンカンに怒っているようだ。外交に対して重大な支障が生じることは無論、関係者の生命が危険にさらされる恐れもあるとして、野放図なリークに重大な懸念を表明している。
たしかに情報公開は、今日の世界の趨勢であるし、民主主義の発展にとっては不可欠といえる。しかし、いきすぎれば外交活動に支障を生じさせたり、関係者の間を気まずくすることも十分にありうる。
リークを恐れる結果、外交上のやりとりを文書によらず、口頭で済まそうとする動きが強まるかもしれない。それはかえって、政治の透明性を濁らせることにつながる。
国家間の秘密をどのように扱うべきかについての議論が、今後広範にになされ、そのなかから、望ましいルールが作られていくことが肝要だろう。(上の写真はWikiLeaks の創始者 Julian Assange:AFP提供)
(参考)Cables Obtained by WikiLeaks Shine Light Into Secret Diplomatic Channels : By SCOTT SHANE and ANDREW W. LEHREN / New York Times
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