杜甫の五言律詩「潭州を發す 時に潭より衡にゆく」(壺齋散人注)
夜醉長沙酒 夜に醉ふ長沙の酒
曉行湘水春 曉に行く湘水の春
岸花飛送客 岸花飛んで客を送り
檣燕語留人 檣燕語って人を留む
賈傅才未有 賈傅 才未だ有らず
褚公書絕倫 褚公 書絶倫なり
高名前後事 高名前後の事
回首一傷神 首を回せて一に神を傷ましむ
夜は長沙の酒に酔い、暁は湘水の春景色を見ながら歩く、岸辺には華が飛び交って客を送り、ツバメがさえずれば人が足をとめる
賈傅ほどの才能を持った人はまだ現れぬ、褚遂良の書は古今に絶倫だ、二人の名声は前後しているが、彼らのことを思い起こすと切ない気分になるのだ
潭州は長沙の別名。大暦4年の春、杜甫は長沙に短い滞在をした後、さらに湘水を遡って衡州に向かった。この詩はそのときのもの。
賈傅は前漢の文人賈誼、筆禍により長沙王の太傅に左遷された。褚公は唐初の書家褚遂良、やはり長沙に左遷されている
関連サイト: 杜甫:漢詩の注釈と解説
コメントする