2008年にロシア・アルタイ山脈にあるデニソワ洞窟で、現生人類の子どもの骨と大人の歯が見つかり、とりあえずデニソワ人と名づけられた。ドイツ・マックス・プランク進化人類学研究所の研究によれば、デニソワ人はネアンデルタール人とほぼ同時代人に生きていた、現生人類の支流だった可能性が高い。
アフリカを出た現生人類のうち、ヨーロッパなど西に向かったのがネアンデルタール人、東に向かったのがデニソワ人ということらしいが、ネアンデルタール人がある程度知られているのに対して、デニソワ人は洞窟の中で発見された二つの化石しか見つかっておらず、詳細はほとんどわかっていなかった。
マックス・プランク研究所では、その後、化石の細胞核DNAを分析したところ、興味深い事実が浮かび上がった。デニソワ人は現代のユーラシア人と遺伝的共通点はないが、パプア・ニューギニア人とは、最大12分の一の遺伝情報が共通するというのだ。
これは、デニソワ人がメラネシア地方に進出していたということを意味しないと研究所はいう。アフリカを出てシベリアに落ち着いていたデニソワ人と、後からやってきた現生人類の祖先が交雑し、その結果生まれたニューギニア人の祖先が、後年になってニューギニアにたどり着いたということらしい。
現世人をめぐる進化のプロセスの説明について、マックス・プランク研究所の推測はこうだ。まず、50万年ほど前にネアンデルタール人とデニソワ人の共通の祖先がアフリカを出た。そのうち西に向かったのがネアンデルタール人に、東に向かったのがデニソワ人になった。
現代人の直接の祖先たちは、それより数十万年後にアフリカを出た。彼らのうちヨーロッパに向かったものは先住のネアンデルタール人と交雑していたことがわかっているが、東に向かったグループは、デニソワ人と交雑したということらしい。(写真はデニソワ人の歯の化石:ナショナル・ジオグラフィック)
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