西アフリカの小国コート・ディヴォアール(Cote d'Ivoire)がちょっとした内乱状態に陥っている。こちらは北アフリカ諸国とは事情が異なり、権力をめぐる闘争という側面が強い。それに一般の市民が巻き込まれ、連日のように人が殺される事態が続いているというわけだ。
ことの発端は昨年の10月に行われた大統領選挙の結果にある。現職のグバグボ(Gbagbo)と挑戦者のワタラ(Ouattara)との一騎打ちとなったこの選挙では、ワタラが54パーセントの投票を獲得したと選挙管理委員会が公表したにかかわらず、グバクボ派は選挙に不正があったと主張してその結果を無視し、引き続き大統領職にとどまり続けたので、二重権力状態が出現した。
だが実際の権力基盤は当然のことながらグバクボの方が強く、武力でワタラ派を放逐しようとした。これに対して選挙結果を尊重するように求める市民がデモを行って抗議したが、グバグボ派はそのデモ隊を容赦なく弾圧した。その結果、これまでに400人以上の死者が出る始末だった。先般の国際女性デーには、平和に行進していた女性たちのデモ隊に、グバグボ派の軍隊が無差別射撃を行い、大勢の女性たちを殺した。
こうした事態に、国際世論もやっと動き出した。この内乱が丁度北アフリカのジャスミン革命と重なっていたために、その陰に隠れて問題になることほとんどなかったが、権力者が自分の権力維持のために、国民を無差別に殺す様子を見せられて、黙ってはゐられなくなったといえよう。
グバグボはワタラ派殲滅作戦を遂行するのと並行して、政府によるココアの専売政策を推進している。
コート・ディヴォアールは、国名が連想させるように象牙がシンボルだが、いまではココアの栽培が最重要産業だ。世界のココア生産量の大半を占めている。そこへ専売制度を持ち込むことによって、ココアの生産から流通にいたるまで国が管理し、そこから生じる莫大な利益を、自分の権力を維持するための資源にしようとする魂胆だ。
ともあれこれは、一個人が国家を私有財産と同じように扱っていることの典型的な例ということができよう。(写真はロイター提供)
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