チュニジアのジャスミン革命に始まり、あっという間に20か国に使い国々に広がった民主化運動は、国によってさまざまな展開を見せている。チュニジアやエジプトのように民主化運動が勝利し、独裁者が倒されたところもあれば、リビアのように独裁者が武力を以て命運をつないでいる国もある。そんな中で、民主化運動が最もひどく粉砕された国はバーレーンだろう。
昨日(4月28日)、バーレーンの軍事法廷は、反体制デモに加わった人物4人に死刑判決を下した。警察官二人を殺害したというのが判決理由だ。殺されたという警察官は、民主化運動に立ち上がった人々に血の弾圧をしていた連中だ。双方が衝突する中で大勢の市民が殺されたが、弾圧する側にも殺される奴がいたということだ。
こうした事態に対してバーレーン国内では、表立った抗議運動は今のところはないようだ。それほどバーレーンの反体制運動は、骨抜きにされてしまったということなのだろう。
バーレーンでは、チュニジアに刺激された形で、シーア派教徒を中心にしたデモが2月の中旬に発生した。直接の動機は、スンニー派の王権によって、国民の大多数を占めるシーア派が抑圧されている現状を改革しようとするものだった。
民主化運動は次第にエスカレートし、ハリファ王朝を打倒して共和制の確立を目指すようになった。これに危機感を抱いた王朝側は、サウディ・アラビアやアラブ首長国連邦などアラブ6か国に介入を要請、デモ隊は外国軍の介入によって鎮圧された。
こうして一時はアラブ諸国における民主化運動の砦ともみなされたバーレーンの反体制派は、権力側のなりふり構わぬ反撃によって粉砕された。アメリカのオバマ大統領は事態の成り行きに憂慮の念を表明したが、具体的な対応はとらなかった。
バーレーンは人口わずか120万人あまりの小国だ。そんな国の反体制運動など、つぶそうと思えば簡単につぶせる、こんな冷徹な真理が今回の事態で明白となったわけだ。
小さな国で、小さな勢力が、反体制運動を成功させるには、世界を味方につけねばならぬ。そうすれば、権力といえども、自分の国の民衆をそう簡単には殺せない、逆に世界が手をこまねいていると、民主化運動は権力によってたやすく粉砕されてしまう。今回の事態はそのことを明らかに示したともいえる。(写真はロイターから)
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