エズラ・パウンドの詩集「ペルソナ」から「木」The Tree(壺齋散人訳)
俺は森の中の一本の木となって
見たこともない事柄の真実を知った
たとえばダフネや月桂樹の枝について
また神々に祝福されたカップルが
野原に大きな樫の木を育てると
神々がそれを愛でて光臨し
彼らの家庭に迎え入れられるや
偉大な啓示を垂れ給うたということを
こうして俺は一本の木であり続け
多くの新しい知恵を身につけた
以前ならくだらないと思っていた事柄を
パウンドは1909年にだした第三詩集に「ペルソナ」という題名をつけたが、1926年にそれまでの始業を締めくくるための自選選集を編むにあたっても、「ペルソナ」という題名をつけた。
ペルソナとは本来人格というほどの意味だが、仮面という意味もある。そこからさまざまな人格を使い分けるというようなニュアンスをもつようにもなった。パウンドはそのニュアンスを尊重しているわけである。
この詩はパウンドが人間ならぬ一本の木に変身し、木の立場から世界を眺めたら、どういう光景が現れるかを歌ったものだ。
The Tree
I stood still and was a tree amid the wood,
Knowing the truth of things unseen before;
Of Daphne and the laurel bow
And that god-feasting couple old
that grew elm-oak amid the wold.
'Twas not until the gods had been
Kindly entreated, and been brought within
Unto the hearth of their heart's home
That they might do this wonder thing;
Nathless I have been a tree amid the wood
And many a new thing understood
That was rank folly to my head before.
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