上の写真(AP提供)は、ソウル市内をデモ行進する女性たち。風変わりな化粧を施し、白い帷子をまとっている姿は、死人であることを、つまり自分たちが殺されるという不安を訴えている。韓国では権力に対して命を張って抗議するときに、よく使われるパフォーマンスだという。
この女性たちはみな売春婦だ。普段自分たちが働いていた(?)売春宿が、政府主導の再開発計画によりつぶされることになった、そうなると自分たちは飯の食いはぐれになると、訴えているわけだ。デモ行進には数十人の売春婦たちと彼女らの雇い主らが参加した。エスカレートするあまり、頭から灯油をかぶり、焼身自殺の真似をしようとする者もあらわれた。
この写真は、TIMEの最新号に乗っていたものだ。これを見て筆者は少なからずびっくりした。韓国はソウルオリンピックを機会に売春を禁止し、違反したものを厳しく処罰していたのではなかったか、そう思ったからだ。
たしかに法律上は、売春は禁止されている。女子に売春させることはもとより、自分の意思でセックスサービスをすることも禁じられている。だが実際は、売春容疑で厳しく処罰されることはほとんどないらしい。いまでも買収宿は韓国のあちこちでみかけられるし、売春を職業として選んでいる女性も10万人以上いるといわれる。
しかしここまであからさまな光景を見せつけられると、なんのために売春規制法を制定したのか、部外者には不思議だ。売春を禁止するなら、実効的な取り締まりがなければただの絵に描いた餅にことならない。
といって筆者は、このデモに参加した女性たちを責めているわけではない。
関連記事:
ドルトムント市が売春に課税
売春の経済学:供給拠点オヂェーサ Одеса
遊女の社会史:日本売春文化の始まり