IMF専務理事ドミニク・ストロスカーン(Dominique Strauss-Kahn)が、ニューヨークのホテルで性的暴力を働いた容疑で逮捕されたというニュースは世界中の事情通をあっといわせた。ストロスカーンといえば、有能な金融官僚としてリーマンショックやユーロ危機を乗り切ってきたことが評価され、いまや次期フランス大統領にもっとも近い男と言われていたからだ。
本人は容疑を強く否定しているし、フランス社会党は来年の大統領選を控えて仕組まれた陰謀だといきまいている。またIMFは今のところ事情を見守るとして、ストロスカーンの人事にかかわることを判断保留している。
事実の詳細は調査中だが、検察当局によれば次のようなことらしい。
ストロスカーンはニューヨークのホテルに滞在していた5月14日の正午頃、清掃のため部屋に入ったメードに対して、浴室から裸で出てきて接近し、彼女を廊下に押し倒し、オーラル・セックスを迫った。彼女が逃げたため、再度追いかけ、浴室に引きずり込もうとした。
翌15日、ストロスカーンは何食わぬ顔でチェックアウトを済ませ、ケネディ空港に向かった。そしてフランスへ向かうエールフランス機の中で、離陸10分前に、空港警察によって連行された、ということらしい。
こんな話を聞かされたら、だれでもしびれるだろう。分別盛りの男が、女性の姿を見て俄かに淫欲を催し、勃起したペニスをメードの前に突き出して、これをしゃぶれといったわけだから。それこそ漫画の世界の出来事といってよい。
本人は事実関係を否定して無罪を主張しているが、どうも形勢は不利なようだ。というのもストロスカーンには、過去にもセックス・スキャンダルを引き起こした前科があるからだ。2008年にはIMF女性職員との間で不倫騒動を起こしており、2002年にはフランス人女性をレイプしたとされる。今度の場合もさもありなんというわけである。
ストロスカーンは社会党の大統領候補として、サルコジをしのぐ人気があった。社会党もストロスカーンを担ぐことで、久しぶりの政権奪取に望みをかけていた。今回の事件はそんなストラスカーンとフランス社会党にとって、致命的なダメージとなったようだ。
もっとも今回の事件で有罪となれば、25年の懲役刑が課されることとなるので、ストラスカーンにとっては、大統領になれなかったことを悔やむどころの騒ぎではなかろう。
それにしても、ストロスカーンのやり方はあまりにもせこい。同じセックス・スキャンダルでもベルルスコーニとは雲泥の差だ。片方はブンガブンガでお楽しみ、なおかつ首相のままでいられるのに、こっちは強姦未遂で未来を棒に振るわけだ。(写真は連衡されるストロスカーン:WSJから)
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