8月31日、BPのモスクワ事務所がロシア司法当局によって強制捜査された。司法当局はBPをめぐるビジネス上のトラブルから提起された訴訟手続きの一環だと説明しているが、BP側は何らの法的根拠を持たない違法な捜査であり、陰湿な政治的な意図を持つものだと反発している。もっとも捜査そのものに対しては協力したそうだ。
BPをめぐるビジネス上のトラブルとは、北極海の石油採掘権をめぐってBPとロシアの国営石油会社ロースネフチとの間で生じた事態だ。両者は資本提携関係の証として株式の相互持合いを模索したが、これにTNK-BPの株主が介入、その結果提携関係がご破算になった。TNK-BPはBPが50パーセント出資の現地法人だが、ロシアでの投資はすべてこの法人を通して行うという契約になっているのに、それが無視されたといって横槍をいれたのだった。
これに対して今回訴訟を提起したのは同じTNK-BPの少数派の株主、彼らはこの提携がご破算になったことで、事業機会が失われたとして、その損失に起因する30億ドルの損害賠償を、チュメニの裁判所に提訴したのだった。
この日BPの事務所に踏み込んだのは裁判所が派遣した捜査官のほか武装警官や原告の代表など約20人。訴訟に関連した社内文書やEメールなどを押収したという。
これについてBPは声明を発表し、「チュメニの裁判所の決定がまかり通るなら、誰でも企業の構内に好き勝手に踏み込んであらゆる文書を調べることができるということになる」と、強く抗議した。
BPはこれまでにも、ロシア国内でのビジネスをめぐって、官憲から度重なる妨害を受けてきた。今回も明らかに政治的な意図に基づく嫌がらせだと、BPでは分析している。
なお、ロスネフチはBPとの交渉決裂後エクソン・モービルに相手を切り替え、8月30日に北極海油田の共同開発に関して合意したばかりだった。(写真は北極海の油田開発:APから)
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