ニューヨークのウォール街を舞台に、一つの市民運動が盛り上がっている。この運動を組織した人々はそれを、「ウォール街を占拠せよ(Occupy Wall Street)」と呼び、ネットを通じて多くの人々に集会への参加を呼び掛けた。
デモが最初に行われたのは9月17日(土)。呼びかけに応じて1000人の市民がマンハッタン南部のウォールストリート付近にあるザコッティ公園に集まった。
ところがニューヨーク市警察は公園にテントを張るのはもとより、蝟集するのも認めなかったので、参加者たちは街路にあふれ出て路上を歩き回るうち、自然とデモの形になったという。
このデモの趣旨は次のとおりだ。
リーマンショック後の混乱を経験したにかかわらず、アメリカ資本主義は全く危機の本質を理解していない、そのため経済はメチャクチャな様相を呈し、勤労者や市民は塗炭の苦しみをなめさせられている、それはあげてウォール街に陣取る貪欲な資本家たちのせいだ。彼らに替って自分たちがウォール街の主人になり、人間のための人間らしい経済システムを作り上げよう、云々。
運動は2週目に入ってさらに大きくなり、9月24日のデモには1500人が参加した。これに対してニューヨーク市警察は一段とガードを固め、デモ隊に向かって催涙ガスを浴びせる場面もあった。
ガスを浴びせかけられた人々は、権力への抵抗を一層強めるようになった。彼らはアラブの春を引合いにだし、アメリカにも人間らしい政治を実現しようと主張している。
9月30日には、1000人の参加者が集まり、ウォールストリートからニューヨーク市警察本部に向かって行進した。(上の写真:APから)
デモ参加者たちは、ニューヨーク市警察が自分たちを犯罪者のように扱っていることに怒りの声をあげている。ニューヨーク市警察は最近ムスリム社会を対象にスパイ活動を行うなど、抑圧的な姿勢を強めている。市民の目で監視しなければ、アメリカの民主主義は破滅してしまうかもしれない、と彼らはいう。
アメリカの普通の市民が政治的な行動に立ち上がったことは、1960年代の公民権運動後はほとんどなかったことだ。今日のアメリカが抱えている問題の深刻さを伺わせるものというべきだろう。
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