ロシアの国策研究機関「世界経済国際関係研究所(ИМЭМО)」が最近発行した特別報告書の中で、北朝鮮崩壊と南北統一のシナリオについて言及している。こうしたシナリオは、これまでも西側で研究されてきたことはあったが、北朝鮮の事情に詳しいロシアの研究であるだけに、新鮮な興味を以て受け取られている。
ИМЭМОは、第一段階として金親子の権力交代にともなって大規模な政治的不安定状態が出現し、それが内乱に発展する可能性が強いと推測する。内乱を戦う当事者は、海外の政財界と連携する「軍部の一部特定勢力を含む官僚たち」と、そのような連携を持たない「軍・武力部署の人たち」だ。つまり現体制に一定程度の不満を持ち西側に向かって開いた国づくりをしようとする勢力と、金王朝体制を死守しようとする勢力との戦いだ。
この内乱の結果、北朝鮮に国際社会が統制する臨時政府が樹立され、武装解除と現代化が進むようになる。新しい体勢から排除された勢力(従来の支配者たち)は中国とロシアに政治亡命する。その数は100万人以上にのぼるだろう。
その後、北朝鮮の経済社会体制は次第に韓国に吸収され、そのプロセスの中から、南北統一の大きなチャンスが訪れるというものだ。
この報告は、北朝鮮内に、金体制に反発する大きな勢力が存在していることを前提として初めて成り立つ推論を含んでいる。その信憑性は、ロシアが北朝鮮情勢にどこまで精通しているかにかかっていよう。
なおこの報告書は、新たに生まれるべき統一朝鮮にロシアが深くコミットすべきだと主張している。
朝鮮半島を支配しようというのは、帝政ロシア以来のロシア人の野望だ。日露戦争以来、日本と死闘を繰り広げてきたのはその野望の表れだ。今ロシアは、北朝鮮を介して韓国との経済協力を強化しようとしている。その意図の背景に上述のような事情が隠されているとすれば、日本人はロシア人の深謀遠慮に一定の配慮を加える価値がある。(写真はキム・ジョンウン:ロイターから)
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