蘇軾の五言古詩「寒食の雨(其一)」(壺齋散人注)
自我來黃州 我の黃州に來りてより
已過三寒食 已に三たびの寒食を過せり
年年欲惜春 年年春を惜しまんと欲すれども
春去不容惜 春去って惜しむを容れず
今年又苦雨 今年又雨に苦しむ
兩月秋蕭瑟 兩月 秋蕭瑟たり
臥聞海棠花 臥して聞く海棠の花の
泥汙燕脂雪 泥に燕脂の雪を汙(けが)すを
暗中偷負去 暗中偷かに負ひ去る
夜半真有力 夜半 真に力有り
何殊病少年 何ぞ殊ならんや 病める少年の
病起頭已白 病より起きれば頭已に白きに
自分が黄州に来てから、すでに三度の寒食を過ごした、毎年春をゆっくり惜しもうとは思うのだが、春の方ではさっさと過ぎて行ってしまう
今年の春も雨が多かった、二カ月の間秋のようなさみしさだった、寝ながら耳を澄ましていると、海棠の花が落ちて、白い花が泥まみれになる
夜半暗闇の中に力持ちが現れて、その花を持ち去ってしまった、病気で長らく寝ていた少年が、床から出たときには白髪頭になっていたなどと、いうことにならぬよう気を付けよう
黄州に流謫中の詩。寒食とは二十四節気のひとつ清明の前日のこと。いまでいえば四月の初旬である。蘇軾は黄州に着て、三度目の春を迎えたわけだ。
古来この日を挿む三日間は、火をたかず冷えたものばかり食べる習慣があったので、寒食と呼ばれた。
蘇軾はこの詩の中で、食べ物が冷たいばかりか、空模様も肌寒いと不平を述べている。
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