黄州にいたころ、蘇軾は朝雲という女性を妾にした。朝雲は蘇軾の夫人が杭州時代に侍女にと買ったものだった。その時朝雲はまだ12歳、以後蘇夫人の侍女として仕えてきた。単なる女中ではなく、教養のある女執事のようなものだった。
その朝雲が蘇軾のために男の子を生んだ。蘇軾はその子を遁児となづけた。小さな隠遁者というほどの意味だ。元豊6年のことだった。蘇軾はその子のために詩を作って祝ってやった。
人皆養子望聰明 人皆子を養へば聰明たれと望む
我被聰明誤一生 我聰明を被りて一生を誤つ
惟願孩兒愚且魯 惟だ願はくは孩兒の愚且つ魯
無災無難到公卿 無災無難にして公卿に到らんことを
人は自分の子どもが聡明であってほしいと願うものだが、自分はなまじ聡明だったおかげで一生を誤った、願わくば我が子には愚頓に生い立ち、禍を避け難を逃れ、できうれば宰相の地位に上ってほしい
蘇軾の願いにかかわらず、この子は幼くして死んだ。
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