北朝鮮の独裁者金正日が死んだことで、韓国、日本、アメリカに緊張が生じたほか、中国も国境警備を強化するなど、一定の反応を示している。金正日の死により生じる政治的空白が、朝鮮半島情勢に不測の事態をもたらすことを警戒してのことだ。
金正日は文字通りの独裁者だった。北朝鮮は何事においても、金正日の指示がなければ動かないという硬直した政治システムに陥っていたと専門家は指摘している。金正日が病身にムチ打って精力的な活動をしていたのも、自分が動かなければ国が動かないというジレンマに急き立てられてのことだ。
その独裁者がいなくなったわけだから、一定の混乱が生じるのは避けられないかもしれない。先日ロシアの研究機関「世界経済国際関係研究所(ИМЭМО)」が指摘したような、クーデタや内乱の可能性も否定できない。
今のところ、北朝鮮では金正日の三男キムジョンウンを後継者に立て、軍がその後ろ盾になって集団指導体制を確立しようとする動きがあるようだ。
現在の北朝鮮はガチガチの軍事国家といってよく、軍部が金正日を担いで運命共同体を形成している。その運命共同体に対抗できる勢力は育っていないと思われるから、ИМЭМОが指摘するような事態は起こりにくいと考えられるが、政治的な意思決定がうまく機能せずに、停滞や混乱が生じることは十分考えられる。
また金正日が権力基盤を強化する過程で、ラングーン事件や大韓航空機爆破事件などのテロを起こしたように、キムジョンウンも自らの権威を確立するために、冒険主義的な行動に出る可能性はある。
韓国や日本は隣人として直接の影響を受ける立場にある。緊密な連携をとりながら、不測の事態に備える一方、北朝鮮の権力の移行プロセスが平和的に行われるよう、見守っていく必要があろう。
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