シローヴィキ(силовики)とは、KGB(KГБ)などの公安機関の出身者をさしていうロシアの政治用語だ。プーチンはそのシローヴィキのボスとして、自分のまわりに忠実な人間を集めて、強大な権力を支えさせている。このたび、そうしたシローヴィキたちが、メドヴェージェフによって重要なポストに配置された。
メドヴェージェフはロシアの政治腐敗にノーを突きつけた人々に対して、政治改革を約束したばかりだった。選挙における政党要件を緩和して実質的な複数政党制が実現するようにする、州知事などの重要なポストを公選制に戻す、テレビ局にたいする国家支配を緩和する、といった措置だ。
だがメドヴェージェフが栄転させた人物たちは、世の中の民主化とは全く正反対の考えの持ち主ばかりだ。
大統領府長官に抜擢されたセルゲイ・イワーノフ(Сергей Борисович Иванов)は、1980年代からのプーチンの下僚で、プーチンの信任もあつく、一時は2008年の大統領候補に最も近い人物だといわれた男だ。民主主義よりも治安を優先させるタイプの人間だ。
イワーノフに座を明け渡したセルゲイ・ナルイシュキン(Сергей Евгеньевич Нарышкин)は下院議長に就任することになる。
NATO大使から副首相に抜擢されたドミトリー・ロゴージン(Дмитрий Олегович Рогозин)は、ブリュッセルの執務室にスターリンの写真を飾り、こちこちの民族主義者として知られる。軍備担当の副首相としてロシアの軍備近代化に勢力を注ぐと予想されている。
プーチンのために全ロシア民族戦線を立ち上げたヴィアチェスラフ・ヴォローヂン(Вячеслав Викторович Володин)は大統領府副長官に抜擢された。
この人たちが今後どんなふうに振る舞うかは、誰の目にも明らかだ。
「これでロシアの民主主義と政治的自由についての希望は崩壊した」とかつてプーチンの経済顧問を務めたこともあるアンドレイ・イラリオーノフ(Андреи Илларионов)はブログの中で嘆いた。(写真手前がイワーノフ:APから)
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