プーチンがこのたび大統領選への立候補を決意するに至った背景と、彼がロシアの民衆の抗議をどう受け取ったかについて、Newsweek 最新号の記事が興味深く分析している。The Law Of Putin's Jungle The Russian leader may be in for a surprise: he misjudges his adversaries. By Owen Mathews & Anna Nemtsova
プーチンは必ずしも大統領への復帰に固執していたわけではないらしい。自分自身に相応しい名誉ある地位が今後も保障される見込みがあれば、大統領にならずとも満足できた。ところがアラブの春がその考えを打ち砕いた。
彼は民衆によって弾劾された独裁者たちの姿を見て、自分にも同じ運命が待ち構えているのではないかと危惧したのだ。ムバラクが昨日まで自分の部下だった男たちによって手錠をかけられるシーンを見ると、もしかして自分も同じような目に遭うのではないかとの危惧にとらえられたのだ。
そこには、ロシアのリベラル勢力が成長して、プーチンを邪魔者扱いするようになったとの、プーチンの妄想があったらしい。メドヴェージェフでさえ最近は、プーチンの意向に逆らう態度をとるようになった。このままでは自分は、政治的にまずい立場に追い込まれるのではないか。そんな恐怖心がプーチンをとらえたというのだ。
つまりプーチンは、自分の立場をもう一度しっかりさせるためには、大統領に復帰する以外にないと決断したようなのだ。
プーチンは、自分の大統領への復帰をロシアの民衆は支持するに違いないと思い込んでいた。ロシアの民衆にとってプーチンは、経済的な繁栄と政治的な安定を確保してくれた家父長のような存在のはずだ。そんな男にロシアの民衆が反乱を起こすはずはない。
ところがロシアの民衆はプーチンに向かってノーを突きつけた。プーチンは何故そうなるのか理解できなかった。
プーチンはかねがね自分をキップリングのジャングルブックに出てくる大蛇に譬えていた。それに対してロシアの民衆は猿だ。猿は大蛇が怖い。どんな猿も大蛇を面と向かって見つめることはできない。大蛇に巻き付かれたら逃れられないことを知っている。だから大蛇には逆らわない。
猿としてのロシアの民衆が大蛇としてのプーチンに反抗することなどありえないのだ。
ところが猿が大蛇に逆らう場面が現実に起こった。大蛇はその気配を察知して事前に構えることもできなかった。なぜなら大蛇は猿の間に生じている変化に全く気付かなかったからだ。
こんな具合にこの文章はプーチンとロシアの民衆を巡る状況を、興味深く浮かびあがらせている。(写真もNewsweek から)
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