シーシェパードといえば、南極海で調査捕鯨に従事している日本の船団や、和歌山県太地町の捕鯨関係者に暴力的な妨害行動をしているのをはじめ、地中海など様々な海に出没しては、暴力的な手段を用いて、彼らの気に食わない漁業活動を妨害してきた。そのやり方はあまりにもひどく、障害沙汰に発展することもしょっちゅうだ。そこで日本政府も、2010年に、彼らによる日本人への傷害事件に関して、指導者であるワトソン氏を国際手配していた。
そのワトソン氏が、5月12日に、ドイツのフランクフルト国際空港で逮捕された。コスタリカから出されていた国際手配に対して、ドイツ当局が反応したというかたちだ。容疑は、2002年に、コスタリカの漁船が行っていたサメ漁船を威嚇し、船員を危険にさらす行為をおこなっていたというものだ。ワトソン氏は今後コスタリカに移送され、実刑判決を受ける可能性が高いという。
この逮捕劇を巡っては、ネット上で様々な意見が飛び交っているが、その中で筆者の目を引いたのは、ニューズウィーク日本版の記事だった。
「船長逮捕でシーシェパード万事休す」と題したこの記事(筆者はエレーヌ・ホフマン氏)は、一方ではシーシェパードはやり過ぎだといいながら、彼らに対してかなり同情的なのが気になった。
まず気になったのが、今回の逮捕劇の直接の要因となったコスタリカ漁船のサメ漁を「不法」としていることだ。だが、この文章は、「不法」の根拠を明らかにしていない。シーシェパードが不法だといっているのを、そのまま真に受けているのではないかと感じさせる。この記事を読んだ人は、日本の調査捕鯨も不法だと思い込まされる危険がある。
というのも、この記事はシーシェパードを紹介したAFPの記事を引用しながら、シーシェパードがあたかも正義の味方であるかのような言い方をしているからだ。たとえば、こんな調子だ。
「シーシェパードは公海における捕鯨などの<不法>行為に対抗する<直接行動のための革新的戦術>、つまり音響兵器や放水銃、悪臭弾を使った捕鯨船への攻撃に<自信をもっている>。さらに、アザラシ狩猟者の封じ込めにも熱心で、サメやイルカの保護にも乗り出しているという。」
これでは、「公海における捕鯨」が無条件に「不法行為」であるといっているようなものだ。
当のワトソン氏自身は、即時釈放を求めたのに対してドイツ当局が応じないことにショックを受けているそうだ。仮に彼の身柄がコスタリカに引き渡されれば、実刑判決を受ける可能性は極めて高いらしい。そうなれば、彼を中心に動いてきたシーシェパードは深刻な危機に陥る恐れがあるという。
日本はドイツ、コスタリカと犯罪人引渡し条約を結んでいないため、日本への身柄引き渡しを強制することはできない。それ故彼がコスタリカの法律に基づいて厳格に処罰されることを期待するほかはない。(写真はワトソン氏:ロイターから)
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