今年の1月ー2月にかけて、北朝鮮南部の黄海南道で大量の餓死者が出たことについて、北朝鮮当局はそれを、軍への過剰な食糧供出が原因の事実上の「人災」だと認めた。非常に異例なことだ。
ところがその後、食糧事情を巡って、もっとやっかいな事態が進行している。北朝鮮南部の穀倉地帯では、今年の4月以降ほとんど雨が降っておらず、深刻な干ばつが生じているというのだ。このままだと、今年も深刻な不作が懸念されるという。
昨年も、夏の豪雨で農業は大不作に陥ったところ。2年連続の大不作となれば、深刻な食糧危機が発生しかねない。韓国政府の試算では、今年の食糧不足は100万トン規模にのぼるだろうという。発足したばかりの金正恩体制にとっては、厄介な事態だ。
金正恩の父親金正日が、その父親金日成から権力を引き継いだ1994年以降にも、同じような事態が北朝鮮を襲った。ソ連の崩壊の余波などで既に慢性的な食糧難に陥っていた北朝鮮は、1995年夏、1996年夏と2年連続の大水害に見舞われ、深刻な食糧危機に陥った。この時には、アメリカ、日本、韓国などによる大規模な食糧援助がおこなわれたが、それでも60万人から100万人規模の餓死者が出たと推測されている。
今回もその二の舞になりかねない。前回と違って今回は、北朝鮮の孤立度が一層進行していて、海外から大規模な食糧援助を受けられる状況ではない。
今年は金日成生誕100年を記念して強制大国になるのだと、北朝鮮当局はかねてから宣言していた。しかしこのままでは、強制大国ではなく、飢餓地獄になりかねない。
コメントする