アメリカ大統領選の共和党候補ロムニーが、イスラエルとパレスティナを比較しながら述べた言葉がちょっとした波紋を投げかけている。イスラエルを訪問中のロムニーは、選挙資金を集めるパーティを開いたのだったが、自分の息子をも伴ったそのパーティの席上で、イスラエルを礼賛し、パレスティナを貶めるような発言をしたのだった。
発言の趣旨はイスラエルの繁栄に関するものだった。イスラエル人が経済的に成功したのは、パレスティナ人よりもすぐれた資質を持っていたからであり、それはとりもなおさず神意のしからしめたものなのであると強調したうえで、エルサレムは将来にわたってイスラエルの首都であり続けるというものだった。
これを聞いたパレスティナ人が怒ったのは無理もない。パレスティナの高官サエブ・エレカトは、ロムニーの発言は人種的な偏見に満ちたものだと批判し、パレスティナが経済面で潜在的な能力を発揮できないでいるのは、イスラエルによる占領の影響なのであって、決してイスラエルより能力が低いわけではないと反論した。
また、ロムニーは中東問題の本質が何もわかっていないし、イスラエルについてさえ何も知らないと言って、ロムニーを激しく非難した。こんな悪質な発言は、これまでアメリカ政府はもとより、当のイスラエルでさえしなかったことだ、というわけである。
しかしロムニーには、そんな批判は応えないようだ。彼にとって重要なのは、中東問題の正しい理解ではなく、政治資金の獲得なのであって、その意図からすれば、このパーティは大いに成功した。ロムニーは招待した40人のユダヤ人から、しこたま政治資金をかき集めることができたのである。
ロムニーにとっては、正義は小うるさい理屈などとはかかわりがない。金こそが正義なのだ、ということなのだろう。
米共和党の大統領は、ブッシュ父子あたりからその劣化ぶりが顕著となっていたが、ロムニーの場合は、劣化などと言うなまやさしいものではない、政治的人格の崩壊現象と言うべき代物だ。(写真はUPIから)
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