日本人女性ジャーナリストの山本美香さんが、内戦中のシリアで取材中、アサド軍の民兵に銃撃され、死亡する事件が起きた。山本さん(ジャパンプレス所属)は同僚のジャーナリストとともに、トルコ国境から、シリア北部の都市で激戦地となっているアレッポに入り、取材活動中にアサド政権側の民兵に襲われたということだ。
シリアでは内戦が激化して以降、ジャーナリストが取材中に死亡する事件が相次いでおり、シリア人記者に限っても、すでに54人が政府軍によって殺害されているという。2月には戦争ジャーナリストとして高名なイギリス人女性ジャーナリスト、マリー・コルヴィン女史も銃撃を受けて命を落とした。
コルヴィン女史が殺害された時は、イギリスのメディアは大々的に報道したが、イギリス人以外のジャーナリストが死んだ際には、ほとんど取り上げることはなかった。ところが山本さんの死に関しては、BBCなどが反応して報道したそうだ。
それには、山本さんに対する深い尊敬が働いていると、事情通は言う。欧米ではフリーのジャーナリストはいくらでもいるが、日本人の場合には、メディア直属のジャーナリストが殆どで、山本さんのようなフリーの立場に近いジャーナリストはあまりいないらしい。山本さんのような立場の人は、御雇のジャーナリストがやりたがらない仕事、つまり今進行中のシリアのように危険な戦場での取材が中心になる。それこそが自分たちのミッションだと、山本さんのような人たちは思っているらしい。したがって、自分を危険にさらす可能性が高い。よほど度胸を据えてかからないと務まらない。そんな過酷なミッションに、山本さんは命を懸けて動き回り、挙句の果てに遂に命を失ったわけだ。
そんな山本さんの勇気ある行動に、BBCなどは反応したのだろう。筆者もまた、彼女の死に弔意をささげたい。(映像は死直前の山本さん:ビデオ映像から)
山本美香氏の死のニュースいくつかネットで探る。武人の死という感じで涙せざるを得ないが、しかし娘の死を電話で確認する父親の姿をテレビで見ると「親不孝者め」という憤りも感じる。彼女の、ジャーナリストとしての信念には心から敬服するが、そのどこかに“自分探し”的な、生きるモチベーションを自分の中で発見できず、外の状況に求める欲求のようなものが感じられるのが、ちょっと気になったところではある。
「紛争地帯などで一生懸命に生きている人たちがとても好きだ。彼らの強さを伝えたい」
という彼女の言葉が残っている(MSN産経ニュースなど)が、紛争地帯でない場所だって人は一生懸命生きている。危険地帯を選んで足を踏み込んでいく、という、ある意味“魔”の誘惑に彼女はとらわれていたのではあるまいか。