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会津への小さな旅


筆者には、学生時代から仲良くしている友人が何人かいて、そのうちの3人とは、毎年の秋、小旅行を楽しんできた。ドライブ好きな男がいるので、運転は彼に任せて、残りの3人は車の中でのんびりと過ごすのである。そんな我々が、去年、今年と2年続けて会津を旅した。昨年は、土湯に一泊して、福島から会津に回り、今年は、母成峠近くの中ノ沢温泉に一泊して会津盆地をドライブした。

別に会津に拘ったわけではなかったが、重ねて訪ねてみると、結構懐の深いところだという印象を深くする。盆地というと、山に囲まれた狭い土地を連想するが、会津は意外に広く、どこまでも平坦な田んぼがひろがっている。今年はちょうど収穫期に当たっていたので、行く手の四方には黄金の絨毯が茫々と広がり、そこに土地の豊かさを感じた。会津はまた、域内を流れる川が日本海に向かって流れ、会津藩の時代には越後魚沼地方をも領土にしていたため、海の物産も豊富に入ってきた。こんなところから、会津は、徳川時代にあっては、東北でも有数の繁栄を誇ったのである。

日本の命運をかけた戊辰戦争は、会津の人々に苛酷な試練を課した。官軍の中核を占めた薩長の兵隊どもが、勝利に乗じて乱暴狼藉の限りを尽くし、戦後会津藩士はすべて下北半島の不毛の地に追放されたのである。それ故いまでも、会津の人は薩長人を仇敵と思い、膝を交えることを潔しとしないという。

今年の我々の最初の目標は大内宿であった。旧街道沿いにある宿場で、藁葺の古い民家が並んでいると聞いて、まずこれを見物しようという魂胆だった。東北自動車道を西那須野インターで下りて、会津街道を行き、途中会津田島の祇園館というところに立寄ると、中には巨大な屋台が展示されていた。かかるところに、華やかな祭が催されてきたことを知り、改めて土地の豊かさを実感したのだった。大内宿へ通ずる旧街道に入ると、とたんに車は動かなくなった。どうやら観光渋滞が生じているらしい。2キロ半も前から、車がつかえて進みそうもない。やむなくあきらめて、会津若松に向かった。

会津若松では、クラシックな外観の市役所の裏手にある駐車場に車を駐め、市内を歩き回った。昨年来た時には、会津出身の野口英世がお札の顔になったというので、市内はお祭り気分であった。目抜き通りは野口英世青春通りと名を改め、通り沿いには古い建物が散在して、なかなかいい感じであった。また、この通りと垂直に交わる七日町通り沿いにも、蔵作りの建物があったりして、維新以降薩長の政府から差別されたにかかわらず、土地の人々がしぶとく生きてきたことを感じさせた。

市内には、蒲生氏郷の墓がある。氏郷は、信長子飼の武将として身を立て、その後秀吉に仕えて伊勢松坂城主となるが、天正18年(1590)34歳の時に陸奥黒川に封ぜられた。氏郷は聡明な人物だったらしく、信長譲りの楽市楽座などの策を実行し、民力の振興に努めた。若松とは氏郷が黒川に代えて名付けた名である。また、若松城の別名「鶴ケ城」も、氏郷の幼名「鶴千代」からとられている。氏郷はわずか39歳にしてなくなったが、その短い治世の中で会津若松繁栄の礎を築いた人物として、今も会津の人々に敬愛されているそうである。

今年はまた、喜多方の町を訪ね歩いた。喜多方といえば、当節ではラーメンで有名だ。ラーメンは町を挙げての事業として、30年ほど前から取り組み始めたそうで、いまでは町中に数え切れないほどの店がある。我々もそのうちの一軒に入って食ってみたが、味はともかく、どの店も客にアルコールを出さないのは、筆者のような酒好きには物足りない。

ラーメンで有名になる前は、喜多方は蔵の町として有名だった。いまでも、数多くの蔵が残されている。喜多方は、徳川時代から、味噌、醤油、酒などの醸造業が盛んで、それらを収蔵するための施設として、蔵が多く造られたのだという。会津盆地の北にあって、山々を源にする伏流水が豊かな土地柄から、醸造業が発展したそうだ。若松が武家を中心にした政治の町だったのに対して、町人主体の産業の町だったのだろう。

会津といえば、いうまでもなく、磐梯山がシンボルである。盆地のどこにいても、磐梯山ののどかな姿が見える。






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コメント (1)

匿名:

本年も宜しく願います。2007.1.4

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