ウィリアム・ブレイクの詩集「経験の歌」 Songs of Experience から「聖なる木曜日」 Holy Thursdayを読む(壺齋散人訳)
聖なる木曜日
これが聖なる眺めといえようか
豊かに栄える国にあって
子どもたちが惨めさにさらされ
冷酷に扱われているさまを
あのおびえた声を歌というのか
喜びの歌といえるのか
貧しさに虐げられた子どもたち
貧困の国の小さな住人
子どもたちに日はあたらない
子どもたちは寒々とした野を行く
子どもたちの道は茨だらけ
そこは永遠の冬の世界
太陽が輝くところ
雨が降り注ぐところで
子どもたちが飢えることなどはない
貧しさが子どもたちを打ちひしぐこともない
「聖なる木曜日」と題するこの詩は、「無垢の歌」にあるものと一対をなしている。「無垢の歌」では、セント・ポール寺院に集まった孤児院の子どもたちの、それなりに純真な姿が歌われていたが、ここでは一転して孤児たちの惨めな日常が描かれている。
当時のイギリスは表面上は豊かな国であったのに、その裏面には貧しさが隠れていた。その貧しい国の住人たる小さな子どもたちには、太陽が輝くことも、雨が降り注ぐこともない。
この詩を通じて、「無垢の歌」と「経験の歌」がそれぞれ何を訴えているのか、ブレイクの意図を察することができよう。
Holy Thursday William Blake
Is this a holy thing to see,
In a rich and fruitful land,
Babes reduced to misery,
Fed with cold and usurous hand?
Is that trembling cry a song!
Can it be a song of joy?
And so many children poor,
It is a land of poverty!
And their sun does never shine.
And their fields are bleak & bare.
And their ways are fill'd with thorns
It is eternal winter there.
For where-e'er the sun does shine,
And where-e'er the rain does fall:
Babe can never hunger there,
Nor poverty the mind appall.
関連リンク: 英詩のリズム>ブレイク詩集「経験の歌」