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ドイツでも拡大する経済格差


今世紀に入って以来、日本は格差社会の様相をますます強めてきているが、この経済格差の拡大は、ひとり日本にとどまらず、先進資本主義社会共通の現象となっているようだ。アメリカはその典型で、持てるものと持たざるものとの格差が今日ほど広がった時代はないといわれる。ドイツのような、かつては日本同様活力に満ち、国民の機会均等が実現していた国でも、格差の拡大が深刻化してきている。

民間のある調査結果によれば、ドイツではいわゆる中間層の比率が急速に減少し、富裕層と貧困層への二極分化の現象が進んでいる。2000年以来2006年までのわずか数年の間に、中間層は8パーセント減少し、低所得者層(平均所得=16000ユーロの70パーセント以下)の割合は、18.9パーセントから25.4パーセントに増大した。

これら低所得者層の年収は、日本円にして200万円以下である。それだけではまともな生活は出来ない。だがドイツは日本以上に社会保障が手厚い。低所得者層は年収で足りない部分を、社会保障で補って暮らしているのだ。

一方富裕層はますます富裕になる傾向があるという。金を持っている階層にとって、金が金を生み出す仕組みが作られつつあるからだろう。

先日、これらの富裕層の間に、税金逃れを目的として、リヒテンシュタインの銀行に闇口座を設けることが流行していると報道され、貧しい人たちの怒りを買った。この口座を利用していた富裕層は600人にものぼっていたらしい。

ドイツの場合、貧困層の拡大には地域的な差もある。旧東ドイツに属していた地域は、旧西ドイツの地域と比較して、断然貧困層の割合が高いのだ。ドイツ全体では、一人当たり国民所得はEU平均の115.2パーセントなのに、旧東側だけで見ると、80パーセント以下の水準でしかない。

旧東ドイツ北西部に位置するブランデンブルグ州は、そうした貧しい地域の最たるものに分類されている。ドイツがケーニッヒスベルクに及ぶ広大な領土を擁した大帝国時代には、国の中心近くに位置し、グレードの高かった地域だ。

このブランデンブルグ州の中でも、ポーランド国境に近いプレンツラウという都市の状況について、AFPが取材している。それによれば、この都市の住民の購買力はチェコ共和国よりも低く、一部ではルーマニアを下回るという。ディスカウントショップでは、ワイシャツが1ユーロ、ジャケットが4ユーロで売られているといった具合だ。

失業率も深刻で、4人に1人が失業している。運よく職に就いているものでも、賃金の水準は生活を維持するのに足りない場合が殆どだという。その結果若者たちはこの町に愛想をつかして流出し、ベルリンの壁崩壊後2万人が去っていった。

他方で、豊かな人々は豪華な別荘地に自分たちだけのコロニーを作り始めているという。ポツダムはプレンツラウ同様ブランデンブルグ州の都市であるが、かつてはドイツ皇室の居住地だったこと、ベルリンに近いこと、周囲を風光明媚な湖沼地帯が展開していることなど、様々な利点を生かして高級別荘地としてのブランドを高めてきた。

人口も2001年の12万人が、昨年には15万人まで膨れ上がった。多くは富裕層である。彼らは豪華な家を湖のほとりに建て、美しい景色を眺めながら、贅沢な生活を送っているそうだ。

町の当局は、こうした富裕層が侵入してきて地価があがると、旧来の住民が住めなくなるのではないかと懸念している。

どうやら経済格差の拡大が、国民の間の色分けと分断をもたらしつつあるようだ。

(参考)A tale of rich and poor in Germany By Anne Padieu AFP


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