寒椿:水彩で描く折々の花(壺齋散人画)

筆者は子供のころから椿に囲まれて育ったこともあり、椿の花は最も好きな花のひとつだ。春から初夏にかけて咲く、藪椿のように大きな木になるもの、晩秋から冬にかけて低木に花をさかせる山茶花系の椿、そしてこの絵に描いた寒椿と、季節ごとに椿の花を楽しんできた。
椿は日本のほぼ全土にわたって自生しており、古来日本人にとってはなじみ深い花だった。昔から絵の題材としても、繰り返し描かれてきている。
また和歌にも古くから歌われ、万葉集には椿を歌ったもの数種が収められている。
巨勢山のつらつら椿つらつらに見つつ偲はな巨勢の春野を(0054)
我妹子を早見浜風大和なる我を松椿吹かざるなゆめ(0073)
あしひきの山椿咲く八つ峰越え鹿待つ君が斎ひ妻かも(1262)
奥山の八つ峰の椿つばらかに今日は暮らさね大夫の伴(4152)
我が門の片山椿まこと汝れ我が手触れなな土に落ちもかも(4418)
あしひきの八つ峰の椿つらつらに見とも飽かめや植ゑてける君(4481)
絵にある寒椿は筆者の今の家の庭の垣根にしているものを描いたものだ。花言葉は謙譲とか愛嬌。ひっそりと目立たないように咲くところから、こう名づけられたのだろう。
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