ジンチョウゲ(沈丁花):水彩で描く折々の花(壺齋散人画)

初春の町を歩いていると、暖かい陽だまりのどこからか甘い匂いがただよってくる。白粉の匂いのようでかなり強烈だ。匂いの元をたどっていくと、道端にこじんまりと咲いている沈丁花の花のたたずまいに行き当たる。この花は匂いによって、どこからでも人をひきつける力があるようだ。
よくみると、丸く咲いて見える花は多くの花弁が積み重なっているものだ。ひとひとつの花弁は星のような形をしている。
つぼみの間は赤く見えるが、咲き広がると絵にあるように、白っぽくなる。そして花の周りに肉厚の葉が放射状に広がる。
ジンチョウゲはまたチンチョウゲといわれることもある。匂いが沈香に似て、形が丁子のように丸いことからそう名づけられたという。もともとは中国が原産で、漢語では瑞光というそうだ。
日本には室町時代に渡来した。匂いがきつすぎるので、茶花としては敬遠されたが、初春の庭の一隅を飾るには適しているので、多くの人々に愛されてきた。筆者の家にも、必ずジンチョウゲを植えてきた。丈夫な花で、日陰でもよく咲く。
花言葉は「やさしさ、おとなしさ」 若山牧水に、ジンチョウゲを歌った次のような歌がある。
沈丁花いまだは咲かぬ葉がくれのくれなゐ蕾匂ひこぼるる
沈丁花みだれて咲ける森にゆきわが恋人は死になむといふ
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