筆者は少年時代の後半を千葉県の佐倉で育ったから、印旛沼ではよく遊んだ。その隣の手賀沼は、名前は無論知っていたが、行ったことはなかった。手賀沼を始めてみたのは、初老に差し掛かった頃だ。
手賀沼は一時期、生活廃水の汚れによって、日本一汚い沼だといわれていた。それが、筆者が訪れた頃には、なんとか水辺に近寄る気をおこさせるほど、水の状態はよかった。
いま手賀沼には、親水広場というものがある。親水というからには、きれいな水のイメージがなければならぬ。その名を裏切らないほど、手賀沼の水はきれいになったのだといえる。
その親水広場の一角に、水の館という面白い建物が建っている。上の絵はそれを描いたものだ。レンガ色の肌合いが、空の青さを背景にしてよく目立つ。
初めてこの建物をスケッチしたときには、周囲に草が繁茂して、どの角度から見ても、手前の水と一体になった構図が得られなかった。その頃の筆者は、現実の景色に制約されて、それを自由に配置しなおすという発想がなかったのだ。
いまはそんな発想に頼らなくても、建物と水が一体となった視覚がえられる。
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