上の写真(AP提供)は、マゼラン星雲を構成するかじき座30星雲の一角、R136 と称される若い星団、ハッブル宇宙望遠鏡がとらえたものだ。
マゼラン星雲は南半球でしか見られないが、我が銀河系の伴銀河のひとつで、矮小銀河ともいわれる。そのなかでかじき座30星雲のR136と呼ばれる部分は、星の生成の活発なところとして知られている。
写真の中で青く光っているものが恒星、その数は数百ある。まわりを取り囲んでいる赤い雲のようなものは、膨大な宇宙塵、星の誕生に際して材料やエネルギーを供給するものだ。こうした宇宙塵が多く存在するところでは、絶えず新しい星が生まれる。
R136の星々は非常に若く、せいぜい数百年前にできたばかりと考えられている。何故か質量が巨大なため寿命はそんなには長くはないだろうと推測される。こうした星が寿命を迎えると超新星爆発がおこる。
銀河とかマゼラン星雲とかいうと、筆者は宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」を思い起こす。「さそりの火」の美しい挿話はマゼラン星雲が舞台だった。また「韮露青」という賢治の詩も、銀河とマゼラン星雲を歌っている。その一説を引用しよう。
みをつくしの列をなつかしくうかべ
薤露青の聖らかな空明のなかを
たえずさびしく湧き鳴りながら
よもすがら南十字へながれる水よ
・・・・・
水よわたくしの胸いっぱいの
やり場所のないかなしさを
はるかなマヂェランの星雲へとゞけてくれ
南十字へ流れる水は、銀河の流れをイメージしてるのだろう。その水の流れに寄せて、賢治は胸いっぱいのやるせない思いをマゼラン星雲に届けてくれと歌っている。マゼラン星雲には、死んで星に生まれ変わった魂が住んでいるのだ。
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