半年間にわたって繰広がれてきた上海万博が10月いっぱいで終了した。期間中の入場者数7200万人は、1970年の大阪万博が記録した6400万人を突破した。期間中大勢の中国人たちがバスツアーを組んで見学にやってきたそうだが、13億人の人口規模からすると、もっと多くの人がやってきてもおかしくはなかったところだ。
日本の場合についていえば、万博はオリンピックとセットになって、国力の飛躍的発展の機動力になった。中国も同じように、2年前の北京オリンピックと今回の上海万博を契機にして、急速な発展をとげ、近代国家に生まれ変わっていくに違いない。
そのさいに問題になるのは、経済的な拡大だけではなく、政治的な自由の拡大と、それをバネにした民主主義の確立だろう。
民主主義は、国内のエネルギーを開放して真の近代国家に生まれ変わるためには、避けて通れない課題だ。外国との間に成熟した関係を築くためにも、不可欠の要請だ。
ところが万国博期間中の中国共産党指導部のパフォーマンスは、いろいろな意味で考えさせられるところが多かったのではないか。
内政面では、劉曉波氏へのノーベル平和賞授与に対してヒステリックな反応を示したことに見られるように、いまだに人民に対して抑圧的な態度で臨んでいる。今回の万国博の開催についても、地権者に対して十分な補償をせず、強制的に土地を取り上げたとの怨嗟の声が上がっている。
外交上でも、尖閣諸島をめぐる日本とのやりとりで明らかになったように、とても思慮のある大人の態度とは受け取れぬふしがある。これでは中国政府は、国際社会の中で、大国にふさわしい尊敬を受けられないだろう。
オリンピックや万博は、成熟した信頼できる国家だとの評価を国際社会で確立する絶好のチャンスだ。それなのに、その評価にマイナスに働くことばかりしていては、いたずらに自分を貶めることにしかつながらない。(上の写真は万博マスコットのハイパオ:万博事務局提供)
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