ウィキリークスの暴露した情報は、さまざまなところで波紋を立てている。なかでもロシアの政治をめぐる外交官たちのやり取りは、最も興味を引く部分だ。
今日のロシアの政治状況を概括して、アメリカのある外交官は次のように書いた。今日のロシアは、ヴラヂーミル・プーチンを頂点にした、専制的な利権共同体である、官僚機構と犯罪組織(マフィア)が、自分たちの利益を追求するために、手を組んで権力を行使し、どこまでが政府としての活動で、どこまでが私的な利益の追求なのか、明確な区別がつかない、というより政治権力は私的な利益を追求するための手段となっている。
そうした腐敗した事例は、枚挙に暇がないと、その外交官は言う。
・密命を帯びたスパイが、マフィアのボスを使って武器の密輸を行う。
・警察、検察、諜報機関のそれぞれはマフィアの組織と密接なルートを共有している。
・政府高官の間では、賄賂の収受が当然のこととしてまかり通っている。それは自分の職務にともなう正当な収入源のひとつなのだ。
・検察幹部、軍上層部そして有力政治家たちは、マフィアとの間で太いネットワークを作っている。
・権力のネットワークを最終的に纏め上げるのはプーチンだ。彼はこのネットワークに異議を唱えるものは許さない。あのリトヴィネンコ事件もプーチンの仕業だった。
こうした具合に、生臭い事実に基づいて、ロシアの政治に対する批判が展開される。それを聞かされたプーチンはご機嫌斜めだ。とくに、「プーチンはバットマンで、メドヴェージェフはロビンだ」と、気の利いたせりふを聞かされたときには、不機嫌は激怒に変ったらしい。
ロシアの犯罪組織がスペイン国内で行った活動を10年間にわたって追跡してきたスペイン検察庁のホセ・ゴンザレスは、ロシアとは一言で言えばマフィア国家であり、政府の活動と犯罪組織の活動は区別がつかないと評している。
たとえば、トルコ政府を転覆させるためにクルド人勢力に武器を密輸したり、イランのミサイル開発に必要な部品を密輸したのは、マフィアと組んだロシア諜報機関の仕業だった、といった具合に、きわどい情報をもらしている。
ここで言われているロシア諜報機関とは、KGBの後継者たるFSBのことだ。いまやFSBはマフィアと組んで、ロシア最強の利権組織に発展した。これを牛耳っているのがプーチンだ。
プーチンを頂点とし、各州や大都市の首長を裾野とするロシアの強大な権力機構は、権力を最大限に活用して、自分たちの私的な利益をむさぼっている。そんなロシアを腐敗したマフィア国家というのには、十分な理由がある、ウィキリークスの情報提供源にされた人々は、こう叫んでいるかのようである。
外交官たちにこんなふうに言われたプーチンは、アメリカ大使館に向かって露骨な不快感を表明し、もっと気をつけてものをいうように、注文をつけたそうだ。
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