エジプトの騒乱は現地時間29日(金曜日)に一段と高まりを見せた。自然発生的な呼びかけに呼応して、全土でデモが発生し、その一部が暴徒化、方々で警官隊と激しく衝突、少なくとも27人が死亡、数百人が負傷する騒ぎに発展した。
これに対してムバラク大統領は、日付の変わり目になってテレビ演説を行い、国民に冷静になるよう呼びかけた、そのうえで閣僚の全員を更迭し、政治の刷新を約束したが、自分自身の進退については、辞任を拒否した。
これに対して最大の反政府勢力ムスリム同胞団は、ムバラク大統領自らの辞任を求めて、引き続き戦うよう呼びかけている。だがムスリム同胞団は、反政府勢力を掌握しているわけではなく、今後不規則な暴動が繰り返される可能性が高い。
これに対してムバラク大統領は、インターネットと携帯電話の通信網を遮断して対抗している。チュニジアの反政府運動が、フェイズブックなどのネットワークを通じて急速に広がったことを教訓にして、ムバラクなりの対抗策をとったわけだろう。
エジプトの騒乱に関しては、アメリカのオバマ大統領も深い懸念を示し、ムバラク大統領が、国民の要望に耳を傾け、政治の改革に具体的に取り組むよう求めた。
アメリカは従来からエジプトの最大の援助国であったが、それは中東の和平にとって、穏健勢力としてのエジプトが果たす大きな役割に期待していたからに他ならない。
今回も、ムバラクが民衆の要望を受け入れる形で改革に取り組むことにより、引き続き穏健な国家として生き延びることを期待しているようだ。
ムスリム同胞団が反政府運動のイニシャチヴをとるようなことが起こると、それは中東に新たな紛争の種がまかれることにつながる、アメリカはそのことを強く憂慮している。
ムスリム同胞団は、昨年暮れの総選挙で壊滅的な弾圧を受けたが、もし今回の騒ぎをきっかけに影響力を強めれば、パレスチナの過激派と結んで、イスラエルへの軍事的対抗措置をとることが予想される。アメリカとしては、もっとも避けたい方向だ。
だがこうしたアメリカの憂慮を、ムバラクはほとんど考慮していないようだ。自分の身を守るのに精いっぱいだからだろう。それが強硬な態度をとらせているのだろうが、果たしてその姿勢がいつまでもつか。
当面のカギは、軍の動向だ。いまのところ軍はムバラク政権の方へ向いているように見えるが、もしもムバラクが民衆への発砲を命じるような事態が起これば、この先どう展開するかわからない。
いづれにしても、エジプトの情勢からは、当面目が離せそうにない。
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