エジプトの反政府運動は2月1日の百万人集会で最高潮に達した。怒涛のような民衆のうねりに、さしものムバラクも譲歩を迫られ、先日の内閣の更迭に続いて、自らの引退をも約束せざるを得なくなった。だが即時退場を求める民衆の声に対しては、断固拒否の姿勢を示した。
ムバラクのこうした態度に怒りが収まらない民衆は、2月2日にかけて引き続きデモを行った。ところがこのデモをめぐって、新たな事態が発生した。ムバラク大統領を支持するデモ隊が、タハリール広場に陣取った反体制派のデモ隊を囲むようにして、攻撃を加えたのだ。(上の写真:AP提供)
双方は互いに石を投げ合うなどして交戦。多数の負傷者が出た模様だ。軍はそれを傍観し、介入する意思を示していないようだ。
ムバラクを支持するデモは、政府が仕組んだ茶番劇だという見方が強い。エジプトでは以前から、政府に雇われた宿無し連中がデモを組むことは珍しいことではなかった。今回も金で雇われた連中が、反政府デモを襲ったのだろうと見られている。
ムバラクは老獪な政治家として知られているが、すでに国内外から見放され、アメリカにまで即時退場を迫られているに係らず、最後まで図太く生き残ろうというのだろうか。もしかして、自分の身と国民全体の命とを秤にかけているつもりなのだろうか。この騒ぎですでに300人以上が死亡し、数千人が負傷した。混乱がこれ以上長引けば、犠牲者の数はうなぎのぼりに増えるだろう。
ムバラクがやっていることは、危険な駆け引きのゲームだ。彼は今の苦境を乗り切れば、再び権力を掌握できると考えているのかもしれない。だがそれは思い違いだということを、ムバラクは肝に銘じなければならない。
自分の野心のために、国家を内乱状態に陥れようとする試みは、歴史上珍しいことではなかったが、21世紀の国際社会は、もはやそんなことを許すはずもない。それは、ムバラクによるエジプト国民への反逆とみなされるのは無論、人類への敵対行為だといわれるだろう。
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