ボブ・デイランが5月23日に70歳の誕生日を迎えたのを契機に、様々なシーンで彼の音楽が論じられている。ニューヨークタイムズにも、そんな文章が載っていて、興味深く読んだ。Forever Young? In Some Ways, Yes By DAVID HAJDU
この時期に70歳になるのはボブ・デイランだけではない。ジョーン・バエズ、ポール・サイモンも今年中に70歳になるし、昨年の暮れにはジョン・レノンが70歳になったはずだった。また来年には、ポール・マッカートニー、アレサ・フランクリン、ジミ・ヘンドリックスらが70歳になる。
彼らはいうまでもなく、60年代後半から70年代にかけて輝かしい音楽活動をした世代だ。ロックを基調としたその音楽は、前の世代とは異なった新しいミュージックの潮流を形成した。
興味深いことに、彼らはみなエルヴィス・プレスリーの申し子と自認している。プレスリーの音を聞くことから、自らの音楽的感性を磨き上げたというのだ。
彼らが始めてプレスリーを聞いたのは14歳の頃だった。1955年から56年にかけてである。ボブ・ディランが始めて聞いたプレスリーの曲は「ミステリー・トレイン」だった。これが、彼があの独特な音楽を創造する原点となった。
ポール・マッカートニーが始めて聞いたプレスリーは「ハートブレイク・ホテル」だった。ポールは、これこそ音楽だととっさに感じた。
14歳という年齢は、子どもから大人への通過点として、決定的に重要な時期であるらしい。この時期に子どもは自分がどんな大人になるべきかおおよその方向を見定める。それに向かって、知的にも感性的にも、能力のチャンネルが全開する。特に音楽的な感性は、この時期にどんな音に触れるかによって決定的な影響を受ける。
ボブ・ディランの世代はみな、プレスリーの音楽を聞くことから、自分の音楽の創造を開始した。ディランがもし4年ばかり早く生まれていたら、今のような音楽は作っていなかっただろう。
これがこの文章の一応の結論だ。筆者にも納得できるところがある。筆者が14歳の頃に始めて聞いた音楽とはビートルズだったが、以来ずっとビートルズ的な音を基準にして音楽を評価してきた傾向は否定できない。
関連サイト:20世紀のスーパーサウンズ
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