首都高速道路会社が、老朽化した高速道路の大規模改修について検討する有識者会議を立ち上げ、年内にも改修計画をまとめたいと発表した。首都高速道路が最初に開通した1962年から今年でちょうど50年、現時点での総延長301キロのうち、約3割が40年以上経過し、30年以上を合わせると半分近くになるため、大規模改修計画の策定が必要との、国土交通省の問題提起をうけたものだ。
報道を読む限りでは、首都高速道路会社はこれら既存の路線配置をそのまま維持することを前提に、必要な改修を進めていくという方針のようだ。それを遂行するためには当然莫大な費用が必要になるし、また工事期間中の交通への影響など様々な問題があるとして、予想される問題を摘出して、それに対して効果的な対策を今のうちからとっていきたい、そういった意向が伝わってくる。
しかし、このような巨大な社会資本が老朽化したことに関して、その更新のやり方を議論しようとするにあたっては、もっと幅広い視野からの検討も必要だ。ただ単に、今あるものを補修するというだけでは、能がないのではないか。
たとえば日本橋の上部を蓋のように塞いでいる高速道路の、あの無様な構築物を思い浮かべてみたらいい。日本橋といえば、歴史的にも景観的にも、東京のシンボルといってよい。そのシンボルを無様な形で台無しにしているのが、今の首都高の実態だ。東京以外に、都市の中心部に高速道路が我が物顔に居座り、都市の景観を台無しにしているところはない。
老朽化して使えないということになるのなら、それを高い金をかけて、しかも膨大な不自由を伴いながら改修するより、折角のチャンスだと受け止めて、きれいさっぱり取り払ったほうがよい、という発想も成り立つ。その方が、東京全体の活性化と云う点でも、費用の点でも、ずっと効果が高いはずだ。
景観への影響に限らず、高速道路を巡っては再検証が必要なことは山ほどある。いままでは既成事実に引っ張られて、そうした見直しは困難と思われてきたが、老朽化に伴う既存施設の見直しは、高速道路のあり方を抜本的に見直すいい機会だ。
高速道路関係者は、高速道路による経済効果などを持ち出して、既成事実たる高速道路網の維持に努めるのがせきの山だろう。だから上述の委員会も、現行の高速道路網の単純な更新と云うことに終始して、東京という都市にとっての、最適な高速道路のあり方とは何か、それを考えるとは期待できない。
だから、もっと広い視野で論議する場が必要だ。そのためには、高速道路のあり方を決めるのは、高速道路を直接に担当する高速道路会社やその元締めである国土交通省の役人たちではなく、国民全体なのだということを、確認しておく必要があるだろう。
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