民主党の野田政権が消費税増税方針を、すったもんだの挙句決定したことにたいして、国民新党の亀井代表は反発し、野田総理大臣との直接会談の席でも連立からの離脱を表明したうえで、国民新党から出している閣僚の自見氏には、閣僚として署名させない方針だと伝えた。
ところがその自見氏が、亀井氏のいうことには従えないといいだし、30日の閣議で署名した。自見氏以外にも、亀井氏を除く7人のうち6人は亀井氏の方針には従わずに、連立の枠組みに残るといっている。つまり、国民新党は事実上分裂したわけだ。
何が国民新党を分裂させたのだろうか。
国民新党はもともと、亀井氏や綿貫氏ら、小泉構造改革とくに郵政民営化に反発した議員が自民党を飛び出して作った政党だ。だから政策軸と云うものが、郵政民営化を後退させて、できるだけ昔の郵政省の姿に近づけたい、ということ以外には明確なものが見当たらないほど弱い。そんななかで、肝心の郵政再改革も雲行きがあやしくなり、党としてのアイデンティティが限りなくあやしくなってきた。
こんな状態では、党員たちは自分たちの進退をかけても守ろうという大義がないのだろう。そんなものより、末端ながら手にした権力のほうが守りがいがある、ということなのだろうか。
亀井さんの態度にはそれなりの一貫性がある。亀井さんが先の衆議院選で、社会民主党や民主党と交わした選挙協約には、消費増税はしないという項目があった。それが民主党によって破られたのだから、連立を維持できないといういい方は筋が通っている。
それにたいして自見氏や幹事長の下地氏には、亀井氏を批判するうえでの明確な論拠があるようには思えない。下地氏は、郵政改革を進めるためにも連立にとどまるべきだという論拠で亀井氏を説得しようとしたようだが、亀井氏のほうは、それよりも選挙協約を反故にされたことの方が重みがあると判断した。
どちらの言い分に理があるかについて、筆者はあえて容喙しない。一つだけ言いたいのは、政治家たちの言ってきたこと、言っていることが、あまりにもそらぞらしいということだ。政治家たちは国の命運や国民の幸福よりも、自分たちの議席や権力のもたらす快楽のことしか頭にないのではないか。
だから自分たちの議席が安泰になるなら、主義主張を超えて手を握り合おうとするし、一旦手にした権力の快楽を維持するためには、政治理念を介した同志の友情も捨てて恥じない。どうもそんなさみしいというか、さもしいというか、日本の政治の寒々とした光景が見えてくる。
しかし、今回の野田さんたちのやり方をみていると、昨年暮れの沖縄基地移設をめぐる迷走を思い出す。あのときも野田政権は将来の見通しを全く立てないままに、環境影響評価手続きを強引に進めたが、結果は沖縄県の人々の感情を逆なでしたたけで、頓挫せざるを得ない事態に追い込まれた。今回も、法案成立の見通しが立っていないばかりか、強引なやり方をしたために、反対勢力をかえって勢いづけている。これでは、頓挫を重ねることになるのもあり得ないことではない。
ともあれ、亀井氏には「ご苦労さん」といいたい。(写真はNHKから)
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