オバマ大統領が同性婚を支持する発言をした。大統領選に向けての戦術と解釈されているが、その効果については二通りの見方がある。
一つは、オバマ氏の最大の支持母体であるアフリカ系アメリカ人の支持を失い、再選には不利に働くという見方だ、アフリカ系アメリカ人は、同性婚については否定的な傾向が強く、同性婚に賛成する人の割合は30パーセント程度だといわれる。アフリカ系の人々のほかに、保守的な人々の票もごっそりロムニーに流れる可能性が強い。だから敢えて同性婚支持を表に出すことは、選挙戦術上得策ではないとする見方だ。
それに対して有利に働くという見方もある。たしかに黒人層は同性婚に否定的な傾向が強いが、これがはずみになってオバマを見限るまでには至らないという見方だ。実際、同性婚に反対でも、ロムニーよりはオバマに入れるといる黒人が80パーセントに上るとした世論調査結果もある。一方、35歳以下の若年層では、同性婚支持が圧倒的だとされる。こうした若者層は、前回のオバマブームの担い手だったのだが、今回は動きが鈍いと言われる。同性婚に支持を表明することで、こうした若者層やリベラル層の支持を固められるのではないか、とする意見だ。
一方のロムニーの方は、同性婚反対どころかもっと保守的なスタンスをとっている。サントラムやギングリッチほどエクセントリックではないが、妊娠中絶には反対だし、宗教をはじめ伝統的な価値観にこだわっているのは、アメリカの保守層が、一層保守化していることを反映している。前回の中間選挙で共和党の保守派を躍進させたのは、こうした草の根保守層といわれる人々だったわけだが、これが今年の大統領選にどれほどのインパクトをもたらすのか、今のところは不透明だ。
振り返って、我が国の政治状況をみれば、この問題が政治的なイシューになる可能性は、いまのところ皆無に近い。(写真はロイターから)
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