今時民主主義国家を標榜する国でこんなことが起きるとは驚きだ。スト中の労働者に対して治安当局が発砲し、大勢の労働者が殺害されたというのだ。殺害したほうはこれを正当な行為だと主張し、殺害された方は非人道的な皆殺し行為だと非難している。
この虐殺事件の舞台になったのは、南アフリカでプラチナ鉱山を経営しているイギリス資本の鉱山会社だ。この会社では8か月前に賃金をめぐる労使紛争が始まり、会社と労働組合が交渉を続けてきたが、なかなか埒があかなかった。そこで危機感を抱いた会社側が、ストライキを続ける労働組合の行為が違法だとして、治安当局に弾圧を依頼。それにこたえた治安警察部隊がスト中の労働者に発砲したというのだ。
第一回目の武力衝突は8月10日にあった。その際には警官2名を含む10名が死亡した。それを受けて16日に第二回目の大規模な武力衝突があった。この時には3000名の部隊が導入され、デモ隊に向かって発砲した結果、18人の労働者が殺害された。
騒動の発端となったのは、賃金アップを求めて労働者たちがストライキに突入したことだった。このストライキを指導したのはAMCUという労働組合だったが、この鉱山には他にNUMという労働組合もあった。いわゆる第二組合である。会社側はAMCUとの交渉にまじめに取り組まず、NUMを利用して労働者のストの切り崩しを図ったようだ。その結果、交渉がまとまるどころかますます紛糾し、泥沼の事態に陥ったというのが真相のようだ。
会社側は、8か月にも及ぶストライキの結果、経営が危機にさらされているのはAMCUの責任だと強弁し、その弾圧を治安当局に依頼したようだ。治安当局もそれにこたえ、3000人規模の警察力を導入して弾圧に踏み切ったということらしい。
一説には、死者34人、負傷者78人という。またズマ大統領はこの事件について知らされていなかったのか、あるいはその振りをしているのか、詳細な調査を命じたということだ。(写真は南アフリカの治安警察が労働者たちを虐殺した現場:www.libcom.org から)