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英詩のリズム




2008年5月12日

ギリシャの壺に寄す Ode on a Grecian Urn :キーツ

ジョン・キーツのオード「ギリシャの壺に寄す」Ode on a Grecian Urn を読む。(壺齋散人訳)

  いまなお穢れなき静寂の花嫁よ
  沈黙と悠久の養女よ
  森の歴史家でもあるお前は
  誰よりもやさしく花物語を語る
  お前が神であれ人間であれ
  お前の姿にはテンペあるいはアルカディアの谷の
  緑に縁取られた伝説が付き添う
  お前に描かれたものは 男か神か 拒絶する乙女たちか
  狂おしき狩の追跡か 逃れようとする獣のあがきか
  ラッパと太鼓 荒々しい陶酔か

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居酒屋マーメイド Lines on the Mermaid Tavern :キーツ

ジョン・キーツの詩「居酒屋マーメイド」 Lines on the Mermaid Tavern を読む。(壺齋散人訳)

  死んでいった詩人たちの魂よ
  あなたがたの通った居酒屋マーメイドは
  どんな素敵な野原やコケ蒸した洞窟
  どんな理想郷より素晴らしかったそうですね
  あなたがたの啜ったカナリアのワインは
  どんな飲み物にも増してうまかった
  天上のフルーツでさえも
  この店の鹿肉のパイにはかなわない
  何たる美味!
  あなたがたはロビンフッドのように
  マリアンのような女性をはべらせ
  鹿の角にワインをくんで飲んだのでしたね

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2008年5月19日

秋に寄す To Autumn :キーツ

ジョン・キーツのオード「秋に寄す」 To Autumn を読む。(壺齋散人訳)

  霧が漂う豊かな実りの季節よ
  恵みの太陽の親密な友よ
  秋は日の光と手を携えて
  生垣を這う葡萄にも実りをもたらす
  苔むした庭木に林檎の実を実らせ
  一つ残らず熟させてあげる
  ひょうたんを膨らませ ハシバミの実を太らせ
  蕾の生長を少しずつ促して
  花が咲いたら蜂たちにゆだねる
  蜂たちは巣が蜜でねっとりとするのをみて
  暖かい日がずっと続くことを願うだろう

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憂愁のオード Ode on Melancholy :キーツ

ジョン・キーツの詩「憂愁のオード」 Ode on Melancholy を読む。(壺齋散人訳)

  いやいや 忘却の川へ行ってはならぬ
  根を張ったトリカブトから毒の汁を搾ってもならぬ
  お前のその青ざめた額に
  冥府の女王の毒草を押し当ててもならぬ
  イチイの実でロザリオを作ったり
  カブトムシや毒蛾たちに
  お前の鎮魂歌を歌わせてはならぬ
  毛むくじゃらの梟にお前の悲哀を覗かせてはならぬ
  でなければ次々と襲い来る影が眠気を誘い
  魂の疼く苦悩を溺れさせるだろう

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2008年5月26日

ハイペリオン Hyperion :ジョン・キーツ

ハイペリオン(ヒュペリオーン)は、ギリシャ神話に出てくる神で、ゼウスが支配するようになる以前には、太陽を司る神であった。ゼウスは父親のクロノスを始め、タイタン(ティーターン)族に戦いを挑み、ついに長い戦争を勝ち抜いて、新しい宇宙の支配者になるが、この戦いの中で、ハイペリオンも敗れ、太陽の神の座をアポロに譲り渡す。

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アポロへの讃歌 Hymn To Apollo :キーツ

ジョン・キーツの詩「アポロへの讃歌」 Hymn To Apollo を読む。(壺齋散人訳)

  黄金の弓を持つ神
  黄金の竪琴を奏でる神
  黄金の髪をなびかす神
  黄金の火を放つ神
  季節を運ぶ
  乗り物の御者
  神よあなたの怒りが静まるのをみて
  ちっぽけなわたしがあなたの花冠を
  あなたの月桂冠 あなたの栄光
  あなたの光を戴いたとしたら
  そんなわたしは地を這う虫に見えるでしょうか?
  おお デルフォイに坐す偉大なアポロよ

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2008年6月 2日

恐れのとき When I have Fears :キーツ

ジョン・キーツの詩「恐れのとき」 When I have Fears を読む。(壺齋散人訳)

  わたしのペンがわたしの思いを書きつくすまで
  万巻の書を読み豊かな思想を
  収穫のように実らせることが出来るまで
  自分が生きてはいないだろうと思うと

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今夜わたしが笑ったわけ Why did I laugh tonight? :キーツ

ジョン・キーツの詩「今夜わたしが笑ったわけ」 Why did I laugh tonight? を読む。(壺齋散人訳)

  今夜わたしが笑ったわけを 誰もいえる者はない
  いかなる神も 冷静な応答をなす悪魔さえも
  天上からも地獄からも 答えようとはしない
  それでわたしは自分自身の心に向かって問いかけるのだ

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2008年6月 9日

ブライト・スター Bright Star :キーツの切ないラヴレター

ジョン・キーツの詩「ブライト・スター」Bright Star を読む。(壺齋散人訳)

  北極星よ あなたのようにわたしもありたい
  夜空に高く 星々を従えて輝き
  眠りを知らぬ隠者のように
  まぶたを大きく見開いて
  永遠の波が渚をめぐって
  次々と押し寄せるさまを見続けていたい
  また山々や原野の上に降り積もった
  真っ白な雪の絨毯を眺めていたい

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妖精の歌 Fairy Song :キーツ

ジョン・キーツの詩「妖精の歌」 Fairy Song を読む。(壺齋散人訳)

  涙するなかれ!おお涙するなかれ!
  散った花はまた咲くのだから
  泣くなかれ!おお泣くなかれ!
  地中には新しい命が芽吹くのだから
  目をぬぐえ!おお目をぬぐえ!
  わたしは天に召されて
  心静める歌を習ったのだから
          涙するなかれ

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2008年6月16日

この日が過ぎ去った The Day is Gone :キーツ

ジョン・キーツの詩「この日が過ぎ去った」 The Day is Gone を読む。(壺齋散人訳)

  この日が過ぎ去った すべての甘い思い出とともに!
  甘い声 甘い唇 柔らかな手 ふくよかな胸も
  暖かい息 さやかなささやき か細い声も
  輝く目 優雅ないでたち けだるい物腰も消え去った! 

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死 On death:ジョン・キーツ

ジョン・キーツは、不治の病に襲われ自分の死を身近なものとして考え始めて以来、様々な形で死というものに立ち向かい、それを詩に歌った。それらは、輝かしかった日々への愛惜の念であったり、愛する人々への感謝の気持ちであったり、死すべき身にして恋をしたことへの自責であったりした。

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2008年6月23日

バイロン George Gordon Byron :生涯と作品

ジョージ・ゴードン・バイロンGeorge Gordon Byron (1788-1824) は、イギリスのロマン主義が怒涛のように渦巻いた時代に、常にその渦の中心にいた詩人だった。生前はもとより、19世紀中を通じて、ロマンティシズムのチャンピオンとして受け取られたばかりか、シェイクスピアと並んで、イギリスが生んだ最も偉大な詩人だと考えられていた。今日ではシェリーやキーツの後塵を拝するようになってしまったバイロンだが、そのユニークで壮大な業績はやはり超一流の芸術といわねばならない。

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彼女の歩く姿の美しいさま She walks in beauty :バイロン

ロード・バイロンの詩「彼女の歩く姿の美しいさま」 She walks in beauty を読む。(壺齋散人訳)

  彼女の歩く姿の美しいさまは
  雲ひとつない星空のようだ
  闇の黒さと星々の輝きが
  彼女の姿 目の中で出会い
  やさしい光を放っている
  真っ白な昼には見られない光だ

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冷たさが人を包んで :バイロンの宇宙感覚

バイロンの詩「冷たさが人を包んで」 When coldness wraps this suffering clayを読む。(壺齋散人訳)

  冷たさが人を包んで粘土のように変えるとき
  不滅の魂よ 汝はどこにさまよい出るのだ?
  汝は死すことなく とどまることもなく
  抜け殻となった体を残して飛び出す
  もはや形にとらわれない汝は
  惑星の軌道をひとつずつたどっていくのか?
  それとも広大な宇宙を一瞬のうちに
  内なる目でとらえるのか?

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2008年6月30日

音楽に寄せて Stanzas for Music :バイロン

バイロンの詩「音楽に寄せて」 Stanzas for Music を読む。(壺齋散人訳) 

  美の女神の娘たちのなかでも
  お前ほど魅惑的なものはない
  お前のその甘い声は
  水が奏でる音楽のようだ
  その声にうっとりとして
  大海原も静まりかえり
  波はきらりと閃光を発し
  風は気持ちよく夢見るようだ

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オーガスタに捧げる Stanzas To Augusta :バイロン

バイロンの詩「オーガスタに捧げる」STANZAS TO AUGUSTA を読む。(壺齋散人訳)

  わたしの幸運の日が過ぎ去り
  わたしの運命の星が傾いても
  あなたは優しい心をもって
  わたしの過ちを見逃してくれた
  あなたはわたしの悲しみをみて
  それを自分のものとして受け取ってくれた
  わたしの魂が思い描く愛とは
  あなたなしではありえなかった

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2008年7月 7日

ギリシャの島々 The Isles of Greece:バイロン「ドン・ジュアン」から

ギリシャの島々 The Isles of Greece(バイロン「ドン・ジュアン」:壺齋散人訳)

  ギリシャの島々 ギリシャの島よ!
  情熱のサフォーが愛し歌ったところ
  戦争と平和の術が栄えたところ
  デロスが立ち フェーボスが跳ねたところ
  永遠の夏が輝きをもたらし
  太陽のほか沈むもののないところ

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もう さまようのはやめよう So we'll go no more a-roving :バイロン

さまようのはやめよう So we'll go no more a-roving(バイロン:壺齋散人訳)

  もう さまようのはやめよう
  夜はこんなにも更けてしまった
  心がまだ愛に息づいていても
  月がまだ明るく照らしていても

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2008年7月14日

誰がキーツを殺したか Who killed John Keats:バイロン

誰がキーツを殺したかWho killed John Keats?(バイロン:壺齋散人訳)

  誰がキーツを殺したか?
  自分だと クォータリーがいう
  手荒に 容赦なく
  見事な手柄ぶりだったと

  誰が矢を放ったか?
  詩人の番人ミルマンさ
  奴は人殺しが大好きだ
  サウジーも バーローも

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