ジョン・キーツのオード「ギリシャの壺に寄す」Ode on a Grecian Urn を読む。(壺齋散人訳)
いまなお穢れなき静寂の花嫁よ
沈黙と悠久の養女よ
森の歴史家でもあるお前は
誰よりもやさしく花物語を語る
お前が神であれ人間であれ
お前の姿にはテンペあるいはアルカディアの谷の
緑に縁取られた伝説が付き添う
お前に描かれたものは 男か神か 拒絶する乙女たちか
狂おしき狩の追跡か 逃れようとする獣のあがきか
ラッパと太鼓 荒々しい陶酔か
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ジョン・キーツの詩「居酒屋マーメイド」 Lines on the Mermaid Tavern を読む。(壺齋散人訳)
死んでいった詩人たちの魂よ
あなたがたの通った居酒屋マーメイドは
どんな素敵な野原やコケ蒸した洞窟
どんな理想郷より素晴らしかったそうですね
あなたがたの啜ったカナリアのワインは
どんな飲み物にも増してうまかった
天上のフルーツでさえも
この店の鹿肉のパイにはかなわない
何たる美味!
あなたがたはロビンフッドのように
マリアンのような女性をはべらせ
鹿の角にワインをくんで飲んだのでしたね
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ジョン・キーツのオード「秋に寄す」 To Autumn を読む。(壺齋散人訳)
霧が漂う豊かな実りの季節よ
恵みの太陽の親密な友よ
秋は日の光と手を携えて
生垣を這う葡萄にも実りをもたらす
苔むした庭木に林檎の実を実らせ
一つ残らず熟させてあげる
ひょうたんを膨らませ ハシバミの実を太らせ
蕾の生長を少しずつ促して
花が咲いたら蜂たちにゆだねる
蜂たちは巣が蜜でねっとりとするのをみて
暖かい日がずっと続くことを願うだろう
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ジョン・キーツの詩「憂愁のオード」 Ode on Melancholy を読む。(壺齋散人訳)
いやいや 忘却の川へ行ってはならぬ
根を張ったトリカブトから毒の汁を搾ってもならぬ
お前のその青ざめた額に
冥府の女王の毒草を押し当ててもならぬ
イチイの実でロザリオを作ったり
カブトムシや毒蛾たちに
お前の鎮魂歌を歌わせてはならぬ
毛むくじゃらの梟にお前の悲哀を覗かせてはならぬ
でなければ次々と襲い来る影が眠気を誘い
魂の疼く苦悩を溺れさせるだろう
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ハイペリオン(ヒュペリオーン)は、ギリシャ神話に出てくる神で、ゼウスが支配するようになる以前には、太陽を司る神であった。ゼウスは父親のクロノスを始め、タイタン(ティーターン)族に戦いを挑み、ついに長い戦争を勝ち抜いて、新しい宇宙の支配者になるが、この戦いの中で、ハイペリオンも敗れ、太陽の神の座をアポロに譲り渡す。
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ジョン・キーツの詩「アポロへの讃歌」 Hymn To Apollo を読む。(壺齋散人訳)
黄金の弓を持つ神
黄金の竪琴を奏でる神
黄金の髪をなびかす神
黄金の火を放つ神
季節を運ぶ
乗り物の御者
神よあなたの怒りが静まるのをみて
ちっぽけなわたしがあなたの花冠を
あなたの月桂冠 あなたの栄光
あなたの光を戴いたとしたら
そんなわたしは地を這う虫に見えるでしょうか?
おお デルフォイに坐す偉大なアポロよ
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ジョン・キーツの詩「恐れのとき」 When I have Fears を読む。(壺齋散人訳)
わたしのペンがわたしの思いを書きつくすまで
万巻の書を読み豊かな思想を
収穫のように実らせることが出来るまで
自分が生きてはいないだろうと思うと
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ジョン・キーツの詩「今夜わたしが笑ったわけ」 Why did I laugh tonight? を読む。(壺齋散人訳)
今夜わたしが笑ったわけを 誰もいえる者はない
いかなる神も 冷静な応答をなす悪魔さえも
天上からも地獄からも 答えようとはしない
それでわたしは自分自身の心に向かって問いかけるのだ
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ジョン・キーツの詩「ブライト・スター」Bright Star を読む。(壺齋散人訳)
北極星よ あなたのようにわたしもありたい
夜空に高く 星々を従えて輝き
眠りを知らぬ隠者のように
まぶたを大きく見開いて
永遠の波が渚をめぐって
次々と押し寄せるさまを見続けていたい
また山々や原野の上に降り積もった
真っ白な雪の絨毯を眺めていたい
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ジョン・キーツの詩「妖精の歌」 Fairy Song を読む。(壺齋散人訳)
涙するなかれ!おお涙するなかれ!
散った花はまた咲くのだから
泣くなかれ!おお泣くなかれ!
地中には新しい命が芽吹くのだから
目をぬぐえ!おお目をぬぐえ!
わたしは天に召されて
心静める歌を習ったのだから
涙するなかれ
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ジョン・キーツの詩「この日が過ぎ去った」 The Day is Gone を読む。(壺齋散人訳)
この日が過ぎ去った すべての甘い思い出とともに!
甘い声 甘い唇 柔らかな手 ふくよかな胸も
暖かい息 さやかなささやき か細い声も
輝く目 優雅ないでたち けだるい物腰も消え去った!
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ジョン・キーツは、不治の病に襲われ自分の死を身近なものとして考え始めて以来、様々な形で死というものに立ち向かい、それを詩に歌った。それらは、輝かしかった日々への愛惜の念であったり、愛する人々への感謝の気持ちであったり、死すべき身にして恋をしたことへの自責であったりした。
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ジョージ・ゴードン・バイロンGeorge Gordon Byron (1788-1824) は、イギリスのロマン主義が怒涛のように渦巻いた時代に、常にその渦の中心にいた詩人だった。生前はもとより、19世紀中を通じて、ロマンティシズムのチャンピオンとして受け取られたばかりか、シェイクスピアと並んで、イギリスが生んだ最も偉大な詩人だと考えられていた。今日ではシェリーやキーツの後塵を拝するようになってしまったバイロンだが、そのユニークで壮大な業績はやはり超一流の芸術といわねばならない。
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ロード・バイロンの詩「彼女の歩く姿の美しいさま」 She walks in beauty を読む。(壺齋散人訳)
彼女の歩く姿の美しいさまは
雲ひとつない星空のようだ
闇の黒さと星々の輝きが
彼女の姿 目の中で出会い
やさしい光を放っている
真っ白な昼には見られない光だ
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バイロンの詩「冷たさが人を包んで」 When coldness wraps this suffering clayを読む。(壺齋散人訳)
冷たさが人を包んで粘土のように変えるとき
不滅の魂よ 汝はどこにさまよい出るのだ?
汝は死すことなく とどまることもなく
抜け殻となった体を残して飛び出す
もはや形にとらわれない汝は
惑星の軌道をひとつずつたどっていくのか?
それとも広大な宇宙を一瞬のうちに
内なる目でとらえるのか?
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バイロンの詩「音楽に寄せて」 Stanzas for Music を読む。(壺齋散人訳)
美の女神の娘たちのなかでも
お前ほど魅惑的なものはない
お前のその甘い声は
水が奏でる音楽のようだ
その声にうっとりとして
大海原も静まりかえり
波はきらりと閃光を発し
風は気持ちよく夢見るようだ
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バイロンの詩「オーガスタに捧げる」STANZAS TO AUGUSTA を読む。(壺齋散人訳)
わたしの幸運の日が過ぎ去り
わたしの運命の星が傾いても
あなたは優しい心をもって
わたしの過ちを見逃してくれた
あなたはわたしの悲しみをみて
それを自分のものとして受け取ってくれた
わたしの魂が思い描く愛とは
あなたなしではありえなかった
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ギリシャの島々 The Isles of Greece(バイロン「ドン・ジュアン」:壺齋散人訳)
ギリシャの島々 ギリシャの島よ!
情熱のサフォーが愛し歌ったところ
戦争と平和の術が栄えたところ
デロスが立ち フェーボスが跳ねたところ
永遠の夏が輝きをもたらし
太陽のほか沈むもののないところ
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さまようのはやめよう So we'll go no more a-roving(バイロン:壺齋散人訳)
もう さまようのはやめよう
夜はこんなにも更けてしまった
心がまだ愛に息づいていても
月がまだ明るく照らしていても
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誰がキーツを殺したかWho killed John Keats?(バイロン:壺齋散人訳)
誰がキーツを殺したか?
自分だと クォータリーがいう
手荒に 容赦なく
見事な手柄ぶりだったと
誰が矢を放ったか?
詩人の番人ミルマンさ
奴は人殺しが大好きだ
サウジーも バーローも
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