冬に寄す To Winter:ウィリアム・ブレイク
ウィリアム・ブレイク詩集「ポエティカル・スケッチ」から「冬に寄す」 To Winter(壺齋散人訳)
おお冬よ、お前の堅固な扉を閉ざせ!
お前は北国に 暗くて深い住処を建てた
お前の屋根を揺するな
鉄の車で柱を曲げたりするな
ウィリアム・ブレイク詩集「ポエティカル・スケッチ」から「冬に寄す」 To Winter(壺齋散人訳)
おお冬よ、お前の堅固な扉を閉ざせ!
お前は北国に 暗くて深い住処を建てた
お前の屋根を揺するな
鉄の車で柱を曲げたりするな
ウィリアム・ブレイク詩集「ポエティカル・スケッチ」から「宵の明星」 To the Evening Star(壺齋散人訳)
金色の髪をした夕暮れの天使よ
今や太陽が山の端に憩うとき
お前の明るい愛の松明で照らしておくれ
輝く冠をつけて夕べの寝床に微笑みかけておくれ
そして私たちの愛に微笑みかけておくれ
お前が空の青い帳を引くときには
眠りに目を閉じた花々に銀の露をまきかけておくれ
西風を湖水の上で眠らせておやり
輝く目で静かに語っておくれ
夕靄を銀で洗い流しておくれ
やがてお前が消え去ると 狼が暴れまわり
ライオンは薄暗い森に目を光らし
羊たちの毛はお前の聖なる露にぬれる
羊たちをお前の霊力で守っておくれ
ウィリアム・ブレイク詩集「ポエティカル・スケッチ」から「朝に寄す」 To Morning(壺齋散人訳)
おお聖なる処女よ! 純白の衣を着て
天空の黄金の門を開き 出てきておくれ
天空で眠っている夜明けを起こし
東の空から光を注がせておくれ
そして目覚める日に蜜のような露を贈っておくれ
おお輝く朝よ 狩人のように起き上がった
太陽にご挨拶なさい
そしてバスキンを履いて私たちの丘に現れなさい
ウィリアム・ブレイク詩集「ポエティカル・スケッチ」から「歌1」Song No1(壺齋散人訳)
何と楽しく野から野へとさまよい歩き
夏の栄華の限りを味わっていたことでしょう
そのうち私は愛の王子を見かけたの
太陽の光の中を滑っていたわ
ウィリアム・ブレイク詩集「ポエティカル・スケッチ」から「歌2」 Song No2(壺齋散人訳)
私の絹衣も素敵な衣装も
私の微笑も物憂さも
みな恋が追い払ってしまった
すると悲しみやつれた絶望がきて
私にイチイの木を贈りそれで墓を飾れという
本当の恋もこんな終わり方をするもの
ウィリアム・ブレイク詩集「ポエティカル・スケッチ」から「歌3」 Song No3(壺齋散人訳)
愛と調和が一緒になって
私たちの魂にまといつく
君の枝は私の枝と絡み合い
私たちの根っこは結ばれている
私たちの枝には喜びがあふれ
高らかに音をたてやさしく歌う
足元のせせらぎが合流するように
無垢と清純とが出会う
ウィリアム・ブレイク詩集「ポエティカル・スケッチ」から「歌4」 Song No4(壺齋散人訳)
僕は陽気な踊りが好きだ
息遣いも柔らかに歌いながら
無垢な眼差しが見つめあい
娘さんが舌足らずにしゃべる
僕は笑いさざめく谷間が好きだ
こだまする丘が好きだ
みな浮かれ騒ぎに夢中になり
陽気な若者は遠慮なく笑う
ウィリアム・ブレイク詩集「ポエティカル・スケッチ」から「歌5」 Song No5(壺齋散人訳)
思い出よ こっちへ来て
楽しい調べを奏でておくれ
お前の音楽が風に乗って
ふわふわ漂っている間に
私は恋人たちが夢見ている
小川の流れを見つめながら
水の鏡を横切った
妖精たちを釣り上げよう
ウィリアム・ブレイク詩集「ポエティカル・スケッチ」から「狂気の歌 」Mad Song(壺齋散人訳)
荒々しい風が音をたて
夜が冷たい
眠りよ こっちへきて
悲しみを包んでおくれ
だが見よ!朝日が
東の崖に頭を出した
夜明けの騒がしい鳥たちが
地上のものたちを笑う
ウィリアム・ブレイク「ピカリング草稿」から「微笑」 The Smile(壺齋散人訳)
愛の微笑があり
偽りの微笑がある
そしてこの二つの微笑を含めた
微笑の中の微笑がある
ウィリアム・ブレイク「ピカリング草稿」から「心の旅人」 The Mental Traveller(壺齋散人訳)
私は人間たちの国を旅した
男たちと女たちからなる国を
そこで誰もが聞いたことのないような
冷酷で恐ろしい話を聞いた
そこでは子どもは歓喜のうちに生まれ
苦痛のうちに孕まれる
我々が辛い涙でまいた種の
果実を喜びのうちに収穫するように
ウィリアム・ブレイク「ピカリング草稿」より「夢の国」 The Land of Dreams(壺齋散人訳)
起きな 坊や 目を覚ますんだ
お母さんだって心配するよ
眠りながら何故そんなに泣くんだ?
さあ起きな お父さんが守ってやるから
ウィリアム・ブレイク William Blakeの詩集「ピカリング草稿」から「無垢の予兆」Auguries of Innocence(壺齋散人訳)
一粒の砂の中に世界を見
一輪の花に天国を見るには
君の手のひらで無限を握り
一瞬のうちに永遠をつかめ
ウィリアム・ブレイク「ピカリング草稿」から「のっぽのロング・ジョンと小さなメリー・ベル」 Long John Brown and Little Mary Bell(壺齋散人訳)
小さなメリー・ベルの木の実には妖精が住んでいた
のっぽのロング・ジョンの腹の中には悪魔がいた
ロング・ジョンはメリー・ベルに恋をした
そこで妖精が悪魔を木の実に誘った
ウィリアム・ブレイク「ロゼッティの写本」から「愛を語ってはならない」 Never seek to tell thy Love(壺齋散人訳)
決して愛を語ってはならない
愛とは語られることの出来ないもの
やさしい風がそよぐときも
静かに 見えないようにそよぐように
ウィリアム・ブレイク「ロゼッティ草稿」から「君は信じない」 You don't believe(壺齋散人訳)
君は信じない 私も信じてもらおうとはしない
君は寝むっている 私も起きてもらおうとはしない
さあそのまま寝ていたまえ その快適な眠りのうちで
君は命の明るい流れから理性を汲み取ることだろう
理性とニュートン この二つは異なったものだ
ツバメやスズメもそう歌っているとおり
ウィリアム・ブレイク「ロゼッティ草稿」から「キューピッド」 Why was Cupid a boy(壺齋散人訳)
キューピッドは何故男の子なのか
男の子が何故キューピッドになったのか
私の見る限りでは
女の子でもよかったはずだ
ウィリアム・ブレイク William Blake の「ロゼッティ写本」から「女王に」To the Queen(壺齋散人訳)
死の扉は金で作られ
人の目には決して見えない
だけれども目が閉じられ
体が冷たく横たわると
魂が目覚めてあたりをさまよい
その手には黄金のカギを持つ
墓は天国への黄金の門
貧者も富者もそれを目指す
イギリスの護民官よ
この荘厳な門を見よ!
ウィリアム・ブレイク William Blake「ロゼッティ写本」から「永遠のゴスペル」 The Everlasting Gospel(壺齋散人訳)
君たちが見るキリストのヴィジョンは
私のヴィジョンにとっては大きな敵だ
君たちのは君たちのような鉤鼻をしている
私のは私のようなシシ鼻だ
ウィリアム・ブレイク「天国と地獄の結婚」The Marriage of Heaven and Hellから序詞を読む。(壺齋散人訳)
リントラが吼え 重苦しい空に火を吹き上げる
飢えた雲が海面に垂れ込める