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知の快楽




2007年12月12日

アリストテレス:西洋思想へのインパクト

アリストテレスは、ギリシャの哲学が創造的でありえた時代の最後に現れた哲学者である。西洋の哲学が真に創造的であったのは、アリストテレスの時代までであって、その後近代の夜明けに至るまで、形式主義に毒された長い沈滞の時代が続いた。だからアリストテレスは、さまざまな意味で、西洋思想の節目を画す巨大な存在だったといえる。

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2007年12月21日

アリストテレスの形而上学:質料と形相

形而上学という言葉は、西洋哲学の長い歴史の中でさまざまな衣をかぶせられ、実に曖昧な意味に覆われてしまった。時にはこの世の秩序を越えた天上界のことを研究する学問という風にも解釈される。しかし、もともとこの言葉の元になったアリストテレスの著作は名称を持たなかったし、アリストテレスの著作を整理して名称を付した者にとっても、形式的な意味しか持たなかったのである。

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2007年12月28日

アリストテレスの論理学:演繹的推論と三段論法

アリストテレスが後世に影響を及ぼした業績の中でもっとも重要なものは、形式論理学である。カントは、アリストテレス以来論理学は進歩も退歩もしなかったといっているくらいである。今日においては、集合論の見地から、アリストテレスの論理学は乗り越えられ、また彼の追及した推論の形式が論理的思考の一部に過ぎないことが明らかになってきたが、それにもかかわらず、アリストテレスの論理学が歴史上に果たした役割は偉大であった。

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2008年1月 4日

アリストテレスのカテゴリー論:実体と本質

演繹的推論としての三段論法に関する議論と並んで、アリストテレスの論理学が後世に及ぼした影響の中で重要なものは、カテゴリーに関する議論である。カテゴリーとは、存在のもっとも普遍的な規定であるような諸概念をさす。それは論理的に整理された存在の諸様相の一覧表であり、体系的な存在論の試みとして、後世の学者たちに受け取られてきた。

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2008年1月11日

アリストテレスの倫理学:幸福と中庸

アリストテレスの倫理学は、プラトンやソクラテスの倫理思想とは甚だ色合いを異にしている。プラトンとソクラテスが極めて理念的な倫理学を展開したのに対して、アルストテレスは同時代のギリシャ人の実際の生活に根ざした、常識的な議論を展開しているといえるのである。

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2008年1月19日

アリストテレスの政治思想:理想の都市国家

アリストテレスの政治思想は「政治学」の中で展開されている。それはアリストテレスが生きてきたギリシャの都市国家での政治的実践を踏まえたもので、プラトンに見られたような極端な傾向に陥らず、当時の政治的常識といったものを反映しているといえるが、他方、アレクサンドロスによってギリシャ世界が併合され、新たな帝国主義的動きが勃興しつつあった世界の動きに対しては殆ど無頓着なものである

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2008年1月26日

アリストテレスの自然哲学

アリストテレスの自然哲学は、プラトンに集約されたギリシャ古来の伝統的自然観にアリストテレス独自の「質量―形相」の理論を接木したものである。それは一言でいえば、人間を頂点とした目的論的自然観であったといる。

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2008年2月 1日

アリストテレスの宇宙像

アリストテレスは「天体論」の中で宇宙の構造について議論している。それは古代のギリシャ人が抱いていた天体と宇宙に関する想像力を理論的な形式のもとにまとめたものだといえる。その意味ではギリシャ的宇宙像の繰り返しであったが、後世に及ぼした影響は計り知れなかったのである。

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2008年2月 8日

アリストテレスの共感覚論

アリストテレスは人間の理性を二元的に捉えていたようである。理念的で能動的な理性と、感覚とつながりをもった受動的理性とである。

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2008年2月15日

存在の連鎖:アリストテレスによるギリシャ哲学史

アリストテレスは哲学史について自覚的に語った世界で最初の思想家である。無論彼の生きた歴史的な制約からして、その対象はギリシャの哲学であったが、そこにはある一定のヴィジョンにもとづいて思想の発展をたどるという、哲学史を叙述する際に必要な方法意識が働いていた。そういう意味合いにおいて、アリストテレスは世界で最初の哲学史研究家なのである。

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2008年2月22日

ディオゲネス:犬儒派或はキュニコスの徒

マケドニアのアレクサンドロスがギリシャから東方世界にかけてを統一し、世界帝国を作り上げると、かつてのギリシャの都市国家は没落した。それにともない、都市国家を舞台に花開いた、自由で闊達な議論、自然や人間の本性を見極めようとする客観的で普遍的な精神は衰退した。人びとは開かれた大帝国にコスモポリタンとして生きることに反比例するかのように、ますます個人的で主観的な世界に後退していったのである。

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2008年2月29日

ピュロンと懐疑主義の哲学

感覚がもたらすものへの懐疑論は、長い間ギリシャ哲学にとって難点の一つであった。そこでパルメニデスは感覚の世界を「あらぬもの」として、その存在を否定したし、逆にソフィストたちは、人間の感覚は人によってそれぞれ現れ方が異なるのであるから、世界には絶対的な真理などはありえないと主張した。プラトンは感覚のもたらすものを、イデアの似姿だといって、それに一定の場所を認めたのであるが、その説はアリストテレスによって、単なる比喩に過ぎないと批判された。

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2008年3月 7日

ゼノンとストア派の哲学

ゼノンに始まるストア派の哲学は、ヘレニズムからローマ時代にかけて、もっとも広範な影響力を持った思想的流れである。キケロやセネカ、エピクテトスといったローマ時代を代表する思想家たちはみなストア派の哲学者であるし、哲人皇帝として知られるマルクス・アウレリウスも、政治上の実践を別にすれば、ストア派の思想を展開し実践しようとした人物だった。

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2008年3月14日

エピクロスと快楽主義の哲学

エピクロス (BC341-BC270) は、ストア派の創始者ゼノンとほぼ同じ時期に生まれ、アテナイを拠点に活動した。彼の創始した学説は、ストア派の説と並んでヘレニズム時代の思想を代表するものとなった。いずれも、世界帝国の中で相対的に地盤沈下した個人の生き方に焦点を当て、人間にとってよき生き方とは何か、個人の幸福とは何かについて考察した。ストア派が禁欲に重点を置いたのに対して、エピクロスの徒は快楽こそが幸福の源泉と考えたのであった。

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2008年3月21日

プロティノスと新プラトン主義

プロティノス(204-270)は、ギリシャの古典哲学の最後の巨人であったともに、それ以後に続くキリスト教的な世界観にとっては、端緒となる考え方を提供した思想家である。プロティノスが展開した新プラトン主義は、「一なるもの、精神、霊魂」の三位一体の形而上学に帰着するが、それはキリスト教における「父と子と精霊」の三位一体の神学に対応し、プラトンが教える永遠のイデアと神の永遠性の観念を橋渡しするものであった。

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2008年3月28日

聖アウグスティヌス:カトリック神学の祖

聖アウグスティヌス(354-430)は、聖アンブロシウス、聖ヒエロニムスとともに4世紀のローマ帝国に生き、当時勃興しつつあったキリスト教とカトリック信仰に対して、礎石を築いた人である。この3人に後の世代のグレゴリウス法王を加えて「西方教会の四博士」と呼んでいるが、それは彼らがカトリック教会の確立に果たした巨大な功績をたたえてのことであった。

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2008年4月 5日

アウグスティヌスの時間論

アウグスティヌスはキリスト教神学を深化発展させる過程で、ペラギウス派をはじめさまざまな教説と論争した。その際彼は、聖書を深く読み解き、そこに書かれたことを己の論証のよりどころとした最初の人であった。だからといって、彼の思想に不合理な部分が多いということではない。中には近代以降の思想にも通じる普遍的なものもある。

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2008年4月11日

アベラールとスコラ哲学の生成:普遍論争

長い期間にわたるヨーロッパ中世を思想史的な面から特徴付けるとすれば、キリスト教、それもカトリックの教義が支配した時代だったということができる。カトリックの正統教義の前では、それと相容れない考え方は、民衆文化も含めて、すべて異端のレッテルを貼られて迫害された。このカトリック教義を学問的に纏め上げたのが、スコラ哲学といわれるものである。

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2008年4月18日

アッシジのフランチェスコ

カトリック教会内部に修道僧からなる修道会の組織を立ち上げるきっかけをつくったのは、4世紀の聖ヒエロニムスであった。以後修道会はカトリック教会にとって中核的な組織を形成するようになり、その中から多くの聖職者を輩出した。修道会はカトリック教会を、教義と実践の面で支えてきたともいえる。

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2008年4月25日

トマス・アクィナスとスコラ哲学

トマス・アクィナス (1225?-1274) は中世最大のスコラ学者であり、キリスト教神学の歴史上もっとも重要な人物である。その業績は、神の存在の証明を中核として、神学、哲学、倫理学、自然学にわたり、中世人にとっての知のあらゆる領域をカバーし、カトリック的世界観を壮大な規模で展開した。

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