トランスジェンダー
ジェンダーという言葉は、フェミニストたちがポレミカルな文脈の中で用いたこともあって、とかく政治的な色彩を帯びがちである。それは自然の性差に対して、社会的に作られた性差というような意味合いで使われることが多い。
ジェンダーという言葉は、フェミニストたちがポレミカルな文脈の中で用いたこともあって、とかく政治的な色彩を帯びがちである。それは自然の性差に対して、社会的に作られた性差というような意味合いで使われることが多い。
体外受精の技術は今や確固としたものとなり、不妊に悩む人々に光明を投げかけている。この技術を簡単に説明すると、卵巣から成熟した卵子をとりだし、それを試験管の中で精子と結合させた後に、子宮に戻すというものである。
最近号の Newsweek に、死から生還、つまり生き返った男の話が載っていた。この記事は併せて、人間が死ぬプロセスについても考察しており、興味深く読んだ。 The Science of Death, Reviving the Dead By Jerry Adler
むずむず脚症候群なるへんてこな名称の病気があって、結構多くの人が悩んでいるようだ。これは脚にむずむずするような不快感を覚え、それを和らげようとして脚を動かさずにはいられなくなる症状だ。そんなところから、英語では Restless legs syndrome と命名されている。
先稿「肥満の科学」では、肥満の生理的側面について考察した。人間の食物摂取行動には、それを促したり抑制したりするメカニズムが遺伝的にビルトインされており、DNAやホルモンの働きによって、空腹を感じたり満腹したりする生理的な過程を反復しているというものだった。
デジャ・ヴュ Déjà Vu とは、初めて見る光景なのに、それがまるで以前に見たことのあるように、おりありと迫ってくる心理的体験である。日本語では、「既視感」などと表現される。
誰でも不安な気持ちに襲われることはある。それは何か不吉なことが起きるのではないかという予感であったり、大事なことをし忘れているのではないかという心配であったり、進むべき道を間違えているのではないかという懸念であったりする。こうした不安はしかし、生きていくうえで必要なものなのである。
いびきは、かく本人は殆ど自覚することがないが、周囲のもの特に配偶者にとっては悩みの種だ。亭主のいびきに悩まされて、睡眠不足に陥る妻はばかにならない数にのぼるだろう。二人一緒にかけば互いに気にならないだろうと思っても無益である。運悪く目覚めてしまったほうが貧乏くじを引くだけだ。
幸福とはどのような状態をさしていうのだろうか。まず思い浮かぶのは不足がないこと、あるいは進んで自分の置かれている状況に満足していることであろう。とはいっても、すべての人間が不足なく満足する事柄ばかりに囲まれて生き続けることは、そう簡単ではないから、不足より満足の度合いが高い状態をもって幸福というべきだろうか。
2007年のノーベル医学賞は、カペッキ Mario R. Capecchi 、スミシーズ Oliver Smithies 、エヴァンズ Sir Martin J. Evans の三氏に贈られた。受賞理由は、ノックアウトマウスというネズミを用いて人間の遺伝子研究を飛躍的に発展させたというものだ。
メンデルの法則が1900年に再発見されて以来、科学者たちは遺伝子があらゆる生き物の生物学的な基礎になっていると考えてきた。人間についても同様で、細胞の中に存在している遺伝子という実体が、あらゆる人を生物学的に条件付けていると考えられた。
先稿「不安が脳をとらえる時」のなかで、不安発生のメカニズムとその病理現象について考察した。不安は危険に対して身構え、身の安全を確保するために、人間が生得的に備えている作用ではあるが、ときに脱線して不安神経症とか強迫観念とか呼ばれるものを引き起こす、これが一応の結論だった。
京大山中教授らの研究グループが、人間の皮膚の細胞から万能細胞を作り出す試みに成功したそうだ。万能細胞とは、動物のあらゆる組織に変化可能な細胞(幹細胞)のことで、初期化された細胞と考えてよい。これを以てすれば、失われた器官や臓器の再生も可能になる。実用化されれば画期的なことだ。関係者の話では、ノーベル賞にも値する画期的な業績だというが、当然のことだろう。
暗いところで本を読むと近眼になるとか、髪の毛や爪は死んだ後でも伸び続けるとか、人間の身体に関する俗説がまことしやかに語られている。それらは日常の経験に支えられているように思われるので、医師の中にも支持するものがいるほどだ。だが厳密に調べると、医学的な根拠のないものが多いそうだ。
京都大学山中教授らのグループが人の皮膚細胞を用いて万能細胞を作り出したことから、再生医療が俄かに現実味を帯びてきた。教授らはこの方法を用いて、既にネズミの心臓に近いものを作り出しているそうだ。この分野はいまや世界中の研究者の間で功名争いの最前線になっており、誰が最も早く人間の臓器や組織を人工的に作り出せるか、厳しい競争が繰り広げられている。
アメリカ・カリフォルニア州の企業が、ヒトのクローン胚の形成に成功したというニュースを発表し、世界を騒がせている。不妊治療中の女性から取り出した卵子をもとに、その固有の細胞を取り除いた上で、実験者の皮膚から取り出した細胞を植え込んだ結果、成熟したクローン胚に成長したという。妊娠後五日目の胚に相当するそうだ。このまま女性の子宮におけば、実験者の遺伝子を受け継いだクローンベビーが生まれてくるだろう。
地球上に棲息するすべての脊椎動物が魚類から進化したことは、ダーウィン以来の進化論が推測していたことであるが、その直接的な物証はなかなか見つからなかった。ところが4年前に、カナダの北極圏で発見された3億7500万年前の魚の化石には、首と手足がついていた。発見者のシュービン Neil Shubin 博士は、この魚が、水中から陸上へと進出した最初の魚だったのではないかと考え、今日の地上の脊椎動物、ひいては人類にとっても直接の祖先だろうと推測した。
かゆいところを掻くという動作は、人間が生来もっている反射的な行動パターンである。犬や猫など人間以外でも、掻く動作をする動物はいる。熊やリスなども皮膚を掻く動作をするようだ。象やキリンのような大型動物も同様かどうか、筆者は実際に目撃したことがないので、確かなことはいえないが、恐らく掻くのであろう。
どんなに激しい恋をして結婚したカップルも、その激情をいつまでも保ち続けることはむつかしい。ハネムーンの時期が過ぎて子どもが生まれ、生活のパターンが安定してくるにつれて、結婚当初の激情的な愛に結ばれた関係は、次第に落ち着いたものへと変わっていく。そして10年、15年とたつうちに、結婚生活はすっかりマンネリ化し、互いの存在が空気のようなものに成り果てる。配偶者に接しても、恋人時代の頃のように、胸がときめくことはない。
LIVE SCIENCEのWeb上の記事を閲覧していたら、不思議な話にいきあたった。人間の歯、およびその周囲の組織や骨を用いて角膜を再生することができるというのである。学会用語で歯根部利用人工角膜 Osteo Odonto Keraprosthesis というのだそうだ。これまで、失われた角膜の機能を回復する方法は移植しかないと思われていたので、この技術が実用化されれば、画期的なことである。