李白の五言律詩「魯郡の東石門にて杜二甫を送る」(壺齋散人注)
醉別復幾日 醉別 復た幾日ぞ
登臨徧池臺 登臨 池臺に徧(あまね)し
何言石門路 何ぞ言はん石門の路
重有金樽開 重ねて金樽の開く有ると
秋波落泗水 秋波 泗水に落ち
海色明徂徠 海色 徂徠に明らかなり
飛蓬各自遠 飛蓬 各自遠し
且盡手中杯 且く手中の杯を盡くさん
杯を重ねて別れを惜しむのも長くなった、共に山に登り池のほとりを歩んだものだ、もうこの石門の道に立って、再び酒を酌み交わすこともないだろう
秋色濃い波が泗水に立ち、海のような青さが徂徠山を包んでいる、別れ別れになってはそれぞれの道を行くことになる、しばらく共に手中の杯を飲み干そう
李白は長安を追放されて東へと向かう途中、洛陽で杜甫と出会った。時に李白44歳、杜甫は33歳であった。二人の年は一回り離れていたが、互いにひきつけあうものがあったらしい。その後一年近く行動を共にし、黄河流域の各地を遊覧した。高適や岑参といった高名な詩人が加わることもあった。
二人は山東の曲阜近くにある石門山で別れた。この詩はその折の送別を歌ったものである。「飛蓬各自遠」とあるが、その言葉どおり李白自身はその後も放浪の旅を続け、杜甫は官職を求めて都へ向かうが、その願いがかなわずやはり各地を放浪する身となる。二人は再び会うことはなかった。
関連リンク:李白>長安の李白|李白後半生の流浪の旅