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シェイクスピアのソネット60 Like as the waves


シェイクスピアのソネット60 Like as the waves make towards the pebbled shore(壺齋散人訳)

  あたかも波が砂浜に向けて押し寄せるように
  我々の命も終末に向かって先を急ぐ
  後ろのものは前のものと場所を入れ替わり
  次々と争うように前へ進んでいく

  光に包まれて生まれた子どもは
  青年に達して絶頂期を迎えたと思うや
  はやくも影がさしてきて栄光に敵対し
  恵みの時はいまや才能を破壊する側にまわる

  時が青春の輝きの中を刺し貫き
  美しい額に何本もの皴を掘り込む
  時は自然の生んだ類まれな姿を食い荒らす
  誰も時の鎌に刈り取られることを逃れ得ない
    それでもわたしは詩が生き残ることに望みをかけ
    自然の残酷な手を跳ね除けて君を賛美するのだ


時は物事を成熟に導く師であるとともに、あらゆるものを滅亡へと向かって駆り立てる無慈悲な執行人でもある。この詩は、そんな時間の二面性を歌い、ひとはどうしたら時の呪縛から逃れえるのか、そのことを訴えかけている。

最後の二連は、人間が己の創造を通じて、時間の呪縛を超越する可能性に言及している。

この詩が60番目に位置しているのにも、数の遊びが感じられる。


SONNET 60 –William Shakespeare

  Like as the waves make towards the pebbled shore,
  So do our minutes hasten to their end;
  Each changing place with that which goes before,
  In sequent toil all forwards do contend.

  Nativity, once in the main of light,
  Crawls to maturity, wherewith being crown'd,
  Crooked elipses 'gainst his glory fight,
  And Time that gave doth now his gift confound.

  Time doth transfix the flourish set on youth
  And delves the parallels in beauty's brow,
  Feeds on the rarities of nature's truth,
  And nothing stands but for his scythe to mow:
    And yet to times in hope my verse shall stand,
    Praising thy worth, despite his cruel hand.

make towards:に向かって進む、In sequent toil:相次ぐ戦いの中で、Nativity:子どもの誕生、wherewith:with which、confound:破壊する、delves the parallels:皴を刻む、


関連リンク: 英詩のリズムシェイクスピアシェイクスピアのソネット

  • 英詩と英文学






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