ブレーズ・パスカル Blaise Pascal (1623-1662) の宗教意識にはジャンセニスムの影響が見られる。ジャンセニスムとはオランダの神学者コルネリウス・ヤンセン (1585-1638) の思想であり、その遺作が1640年に発表されるや、フランスの貴族階級を中心に根強い信奉者を獲得した。パスカルは1646年に偶然ジャンセニスムの信徒と知り合いになり、その思想に帰依するようになったのだが、本格的なジャンセニストになるのは、1654年31歳の時である。彼はこの年、恩寵の火を見て決定的な回心を行い、その時の感動をメモリアルという形で羊皮紙に書き入れ、生涯お守りとして身につけていた。
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パンセは、パスカルが晩年(といっても30代半ばだが)に、キリスト教の弁証論を執筆するために書き溜めた草稿を、死後友人たちがまとめたものである。草稿といっても断片類が順序もなく乱雑に残されていただけで、そこにパスカル自身の明確で統一したヴィジョンが示されていたわけではなかった。だが友人たちは、それらをつなぎ合わせて一冊の書に纏めた。
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パスカルが神への信仰を賭に喩えたのはあまりにも有名だ。そこには二重の意味が込められている。神の存在が自明ではないことが一つ、もうひとつは、それにもかかわらず、我々人間は神の恩寵によってしか救われないということだ。
続きを読む "パスカルの賭:人は如何にして神と向き合うか" »
スピノザの世界観は、神の形而上学ともいうべきものである。スピノザは、人間の精神の働きを含めた、この世界のあらゆる営みや出来事を神の働きあるいは現われとして理解する。言い換えれば、全体としての世界が神という単一の実体をなしており、その部分はいずれも単独では存在しえず、全体の一部としてのみ存在すると説明する。このような教説を、バートランド・ラッセルは論理的一元論と表現した。
続きを読む "スピノザの形而上学:論理的一元論" »
スピノザの主著「エチカ」を読むと、まずその独特の構成に驚かされる。全体は第一部の「神について」に始まり、5部に分かれているが、いずれの部も、定義に始まり、公理、定理、証明の連鎖からなっており、あたかもユークリッド幾何学の論文でも読んでいるような感じをさせられる。
続きを読む "スピノザ「エチカ」の方法論:演繹的説明原理" »
ライプニッツはデカルトやパスカルと同様、数学や自然科学の分野においても顕著な業績を残した。とりわけ数学の分野においては、微分積分学と記号論理学の創始者として、歴史的な業績を上げた。
続きを読む "ライプニッツとニュートン:微積分学発見の優先権論争" »
ライプニッツは観念論者であったが、その観念論とは唯物論に対比されるような意味での観念論であるというより、存在を論理によって導き出そうとする意味での観念論であった。
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トーマス・ホッブス Thomas Hobbesは、政治理論に関する最初の近代的な思想を展開した人である。ホッブス以前にマキャヴェリがいて、古い因習から開放された新しい権力のあり方を論じていたが、それはまだ近代的な国家というものと結びついていなかった。政治を国家論とからめながら、そこに近代的な考えを持ち込んだのはホッブスが初めてなのである。
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