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ネット上の仮想世界 Second Life


ネット上の仮想空間 Second Life が急速に膨張している。フィリップ・ローズデール Philip Rosedale が2001年に立ち上げて以来、最初の数年間は緩やかな伸びで、2006年までの登録者は150万人だったものが、過去一年間に800万人、この2ヶ月間に200万人という具合に、加速度的に増加している。この調子だと2011年までに、世界中のインターネット利用者の5分の4、数にして16億人がSecond Lifeを利用するようになるだろうと予測されている。

Second Life とは、3D 技術を応用したコミュニケーション・ツールだ。利用者はあらかじめ用意された仮想空間の中に自分の分身たるアバター Avatar を住まわせ、そのアバターを介して他者のアバターとコミュニケーションをする。
3D空間なので現実感は格段に優れており、あたかも自分のしている行為を、ビデオで見ているような感覚を得られる。

利用者はそれぞれ自分のアバターを介して、遠く離れた者と会話することも出来るし、擬似世界のナイトクラブでダンスすることも、セックスすることさえできる。つまりこの現実世界と平行した擬似的世界 Virtual World を生きることができるのだ。Second Life といわれる訳はそこにある。

ローズデールがこのアイディアを考え付いたのは1998年のことだ。かれはネット上に仮想の空間を作り、その空間の一部を利用者に売ることによって、利用者には空間内でアバターを自由に操るサービスを提供した。つまり擬似的な世界を創造したのだった。

インターネットという混沌の空間に新たな世界を創造した、第二の創造主ともいうべきだろう。

この擬似的な世界の住人となったものたちには、かなりの行動の自由が保障された。彼らはこの擬似的な世界に、擬似的な都市を作り、擬似的な遊園地を作り、あるいは擬似的なショッピングセンターを作ったりした。

たとえば、擬似的なショッピングセンターに、ファッションの店を開いたとする。彼らの客になるのはアバターたちだ。アバターたちは自分の気に入った服があるとそれを購入して着る。用意された服装のイメージをクリックするだけで、アバターは様々な服装に身を包むことができるのである。

こうしたアバター相手の商売は、女の子のおままごと遊びのようで、馬鹿馬鹿しいようにも聞こえるが、実際には巨大な需要がある。擬似的世界といえども、人々の集まるところには、ファッションへの欲望が芽生えるのだ。

店の主人は才能さえあれば、大した元手もかけずに、魅力的な商品を次々と作り出し、それを大量に売ることによって莫大な利益を上げることが出来る。というのも、Second Life の世界においては、擬似通貨も用意されていて、人々はその通貨を用いて取引すると同時に、それを現実の通貨と交換することもできるからである。実際に、Second Life からは、何人もの億万長者が生まれている。

こうして今や Second Life の世界は、新たなビジネスチャンスの場となりつつある。それに応じて影の部分もでてきた。たとえば小さな子どものアバターに売春させてみたり、他者のアバターを殺害するような有害な連中が出現するようにもなった。これらに対して運営者のリンデン・ラボは極力介入しない態度をとっている。さすがに児童買春のような悪質なものは除去しているが、犯罪者に対しては利用者が自主的に警察組織を作るよう呼びかけている。

こんな調子であるから、今の Second Life の世界は、開拓時代のアメリカと同じような雰囲気に包まれているのである。

この擬似的世界を現実の世界とつなげる努力も行われている。ニッサンは Second Life に ニューモデルのショップを開店し、そこに販売員アバターを常駐させて、客に様々なサービスを提供している。

ハーバードや MIT など有力大学は、Second Life にバーチャル教室を開き、そこで学生のアバターたちを相手に授業や研究を行おうとしている。

Second Life の今後には、無限の可能性が広がっているようだ。

〔参考〕Why Millions Are Living Virtual Lives Online By Jessica Bennet and Malcolm Beith : Newsweek


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