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小さなヴァガボンド(ブレイク詩集:経験の歌)


ウィリアム・ブレイクの詩集「経験の歌」 Songs of Experience から「小さなヴァガボンド」 The Little Vagabond (壺齋散人訳)


小さなヴァガボンド

  お母さん お母さん 教会は寒いよ
  ビアホールのほうが暖かくて気持ちいい
  ぼくにはそっちのほうがずっといいよ
  天国だってそんなにいいとは思えないもの

  でも教会がもしかしてビールを振る舞い
  暖かい暖炉で暖めてくれたら
  僕らは一日中教会にいて
  歌ったり祈ったりして 決して逃げない

  牧師さんも祈ったり 飲んだり 歌ったりして
  みんな春の小鳥のように幸せになるさ
  チュアーの学校のラーチ先生も
  いたずらどもに手を焼かないさ

  神様だって 僕らが楽しそうにしてるのを見て 
  お父さんのようによろこぶさ
  息子の出来が悪いといって 悪魔をののしることもないさ
  僕らにキスして ビールのおかわりをくれるさ

前の詩「愛の園」において、教会を厳しく批判したブレイクは、この詩のなかでは教会がビアホールのようになったらいいな、という子どもの夢を歌っている。

子どもにとって教会に象徴される精神性の世界は、日常の物質的欲望と切り離されたものではありえない。教会が寒々としている限りは、子どもはそこに快適な空間を見つけることが出来ない。

だから子どもたちは、教会にもビアホール同様の快適さを求め、もしそれが快適であったなら、自分らは喜んで祈るだろうと歌うのである。無垢の精神と経験の世界とは切り離されてはならぬという、ブレイクの思いがこもった作品といえよう。


The Little Vagabond William Blake

  Dear Mother, dear Mother, the Church is cold,
  But the Ale-house is healthy & pleasant & warm
  Besides I can tell where I am use'd well,
  Such usage in heaven will never do well.

  But if at the Church they would give us some Ale
  And a pleasant fire, our souls to regale;
  We'd sing and we'd pray, all the live-long day;
  Nor ever ance wish from the Church to stray,

  Then the Parson might preach & drink & sing.
  And we'd be as happy as birds in the spring:
  And modest dame Lurch, who is always at Chua
  Would not have bandy children nor fasting nor birch.

  And God like a father rejoicing to see,
  His children as pleasant and happy as he:
  Would have no more quarrel with the Devil or the Barrel
  But kiss him & give him both drink and apparel.


関連リンク: 英詩のリズムブレイク詩集「経験の歌」

  • ブレイク詩集「無垢の歌」 Songs of Innocence






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